2023年1月27日(金)から2月1日(水)まで、ヌエバビスカヤ州(フィリピン)において専門家派遣事業を実施しました。当該事業は、海外の自治体などの行政資質と技術力の向上、人材の育成に資するとともに、日本の地方自治体と海外の地方自治体との友好協力関係を強化するため、日本の自治体職員を現地に派遣し、講義や実技を通して日本の地方自治体が持つ行政のノウハウを伝える事業です。今回は大分県から、一村一品運動の専門家として、同県職員OBの朝来壮一氏を同州へ派遣しました。なお、同州における専門家派遣事業の実施は今回が初めてです。
1 当該事業を実施した背景
ヌエバビスカヤ州政府はかねてより一村一品運動(One Town One Product)を推進していましたが、州内各地域でより品質の良い製品を開発し、より効率的に販売していくため、商品の開発計画及びマーケティング計画、ブランディング制度、商品の品質を認証するロゴマーク等について専門家の助言を受けたいという要請があり、今回の事業実施に至りました。
2 専門家による講義・視察の様子
今回のプログラムは講義と関係各所の視察で構成され、専門家は期間中に4つの講義と15以上の視察を行いました。講義には州知事や州の関連部局職員のほか、州内の大学関係者などが参加し、「大分県の一村一品」、「ブランドの公平性」、「マーケティングとブランド戦略」、「ブランディングと認証制度」という4つのテーマで専門家からプレゼンテーションを受けました。専門家は、導入テーマである「大分県の一村一品」の講義において、大分県の一村一品の考え方が現在では「大分ブランド戦略」というコンセプトに発展しており、「The・おおいた」ブランドとして県民に広く浸透していることを紹介したうえで、最も重要なのは「ヌエバビスカヤ州にしかないもの、ヌエバビスカヤ州と言えば何と答えるか」という視点だということを参加者に伝えました。
【専門家の講義の様子】
視察では、州が運営する地場産品の販売店や食品・工芸品加工に特化した大学の研究機関、そして農作物の生産者や加工食品・布製品・家具の製造業などを訪問しました。専門家は各所で関係者から精力的に情報を引き出し、その業者が現在どのレベルにあるかを見極めたうえで、各々のレベルに応じたアドバイスを行いました。既に商品開発やマーケティング、ブランディングに成功し販路を築いている業者もあれば、取り扱っている加工食品の基本的な製造方法を知らない業者も見受けられました。
【視察中の実地指導の様子】
3 まとめ
専門家は6日間の指導の総括として、ヌエバビスカヤ州の今後の一村一品への取り組み方について提案書をまとめ、参加者に向けて発表しました。その中で専門家は、生産者を含んだ関係者の熱意が高い点、より大きな市場にチャレンジできる商品が複数ある点、研究機関や行政部門など商品開発支援に必要な機能が揃っている点などから、次のステップに進むための土台は既に整っていると評価しました。そのうえで、売れる商品づくりや生産者の技術力向上の観点などから、それらを活かしていく手法についてアドバイスを示し、事業を締めくくりました。
事業の執行に立会い、当事業は海外の自治体への知識や技術の伝達だけではなく、日本の自治体にとってもアジア諸国との有意義な情報交換の場及び将来の交流のきっかけとなることを再認識しました。今後も本事業が多くの自治体の皆様に活用されるよう努めてまいります。
【総括終了後にカルロス・パディラ州知事から記念品を受け取る専門家とクレア職員】
※右端から、専門家、クレア職員、州知事