2023年3月17日(金)、日本国総務省とフィリピン内務地方自治省地方行政学院(Local Government Academy)の共催で「日本-フィリピン地方行政セミナー」がフィリピン共和国のマニラ市内のホテルで開催されました。
「アジア地方行政セミナー」は、地方行政に携わる幹部及び職員を対象に、1999年から総務省が東南アジア各国の協力を得て、当該国が抱える課題・関心事項をテーマに講演や意見交換などを実施しているものです。
2016年以来4回目となるフィリピン共和国での開催となった今回、「コロナ禍における災害対策及び地域活性化」をメインテーマに日本とフィリピン共和国の先進事例が報告されました。当事務所は、総務省とフィリピン政府の関係機関や在フィリピン日本国大使館等との連絡調整及び当日の運営支援を担当しました。
1 セミナー開会にあたって
2020年以降、世界的に猛威を振るった新型コロナウイルス感染症の拡大により、両国では上記テーマが大きな課題となっています。今回のセミナーテーマはフィリピン国内自治体の大きな関心を集め、260名超の自治体の首長及び担当職員が一堂に会し、意見交換を行いました。
冒頭挨拶で、フィリピン内務地方自治省のベンジャミン・アバロス・ジュニア長官(日本の総務大臣に相当)は、今回のセミナー開催に尽力した両国機関の努力に敬意を表すると同時に、両国の先進事例の共有によって、地域災害への対応における地方政府の対応力が向上することを祈念する、と述べました。
2 両国登壇者によるプレゼンテーション
(1)日比両国による基調講演
最初のプログラムとなる基調講演では、両国の地方自治制度・コロナ禍からの地域再生等の概要に関する講演が行われました。まず、総務省自治大学校滝川校長が日本の地方自治制度の概要、防災・消防体制やコロナ禍を踏まえた地域活性化に向けた日本国総務省の取り組みなどについて講演しました。
続いて、フィリピン側からは、フィリピン内務地方自治省マーロー・L・イリーンガン 地方自治担当次官(日本の総務省事務次官に相当)から、コロナ禍における災害対応と経済再生に向けたフィリピン政府の国家戦略の概要について講演しました。イリーンガン次官は講演の最後に「地方自治体はあらゆるレベルの当事者を結びつける「蝶番」としての機能が求められる」と結び、多くの参加者に感銘を与えました。
(2)両国の地方自治体による取組事例の発表及びパネルディスカッション
基調講演に続き、両国の地方自治体担当者からテーマに即した先進事例の発表及びパネルディスカッションが行われました。まず、「コロナ禍における災害対策」について、日本側は熊本県健康福祉政策課井上主幹、フィリピン側はイトバヤット町のサバス・C・ディサーグン町長から取組事例がそれぞれ発表されました。続いて「コロナ禍における地域活性化」について、日本側は小田原市未来創造・若者課長﨑係長、フィリピン側はイロイロ市のジェリー・トレニャス市長から発表がなされ、両テーマごとにパネルディスカッションと質疑応答が行われました。参加者からはコロナ禍における災害対応の法体系の仕組みや、国と地方の役割の違い、地域活性化施策に対する国の財政支援等について相次いで質問が寄せられるなど、日本の自治体の取組事例への高い関心が窺えました。
3 アフターコロナにおける両国関係の強化に向けて
事例発表及びパネルディスカッションが終了した後、フィリピン側主催者である地方行政学院調査・政策振興課のエスメラルダ・ダフネ・パーネル副院長が全体総括を行いました。「アフターコロナにおける両国の課題に果敢にチャレンジしていくためには正確な現状認識とともに、絶え間ない政策の点検が必要である」とまとめると同時に、「両国の関係強化のため、今後も知識や経験を両国で共有していくことが必要である」と述べられ、セミナーは盛会のうちに閉会となりました。
4 おわりに
両国は、コロナ禍からの回復途上にあると同時に、自然災害が多い点で共通することもあり、今回のテーマは参加者にとって時宜を得たものとなった様子であり、セミナー終了間際まで熱心な質疑応答が行われるなど、関心の高さが窺えました。今後も、セミナー等を通じた知見の共有や人的交流の継続による両国関係の強化が期待されます。
なお、今回のセミナーの報告内容や講演資料については、以下の総務省自治行政局国際室のホームページでご確認いただけますので、ご参照ください。
URL:https://www.soumu.go.jp/kokusai/kyoryoku_asia.html