2014年5月15日(木)、16日(金)の2日間にわたり、日本国総務省主催の「日本-フィリピン地方行政セミナー」がマニラで開催されました。
当セミナーは、アジア諸国に対して地方行財政の分野で協力することを目的に実施されるもので、開催国政府との協力のもと、地方行政に携わる幹部及び職員を対象に当該国の抱える課題・関心事項をテーマに据えて講演や意見交換などが行われます。1999年から東南アジア各国で開催されていますが、12回目となる今回は「防災・災害対応」をメインテーマとして、初めてフィリピンで開催されました。
シンガポール事務所では、日本国総務省とフィリピン関係機関との連絡調整や当日の運営スタッフとしての支援を行いました。
今回のセミナーは、昨年8月に開催を予定していましたが、マニラにおいて大雨・洪水が発生した影響で延期になったものです。その後、今回のセミナー開催にいたるまでの間、フィリピンでは、ボホール島での地震、史上最大級の台風「HAIYAN」をはじめとした大型台風の断続的な襲来など、大きな災害に立て続けに見舞われました。そのようなことからも、防災対策・災害対応は政府機関・地方自治体関係者にとって、開催予定だった1年前よりも大きな関心を集めており、今回のセミナーでは、予想を大幅に上回る約220名の参加がありました。
冒頭挨拶でフィリピン内務地方自治省のオーステロ・パナデロ副長官は「日本は災害対策について最前線で取り組みを続けている国であり、今回のセミナーを通じてその知識や技術、経験を共有することはフィリピンにとって大変良い機会となる」と述べ、両国が互いに学び合い、共に災害対策能力を高めていくことを期待する旨の挨拶が行われました。
当セミナー最初のプログラムとして、両国の地方自治に関する講演が行われました。まず、総務省佐々木総括審議官が日本の地方自治の制度や体制、財政上の関係、近年の地方分権改革の動きや今後の課題などについて講演しました。東日本大震災時の震災復興特別交付税などの説明にはフィリピン側参加者も興味を示し、具体的な内容に関する質問が出されました。
続いて、フィリピン側からは、アキリノ・ピメンテル元上院議員が、フィリピンの地方分権の現状やこれまでの歩みなどを講演しました。
基調講演に引き続き、植村総務省国際室長による日本での初動・復旧・復興など各段階における災害対応や平時からの備えに関するガイダンスが行われました。
ガイダンスに続いて、是澤消防庁参事官が、日本が経験してきた災害と、それに伴って構築されてきた現在の日本における消防・防災体制の全体像に関して講演しました。また、東日本大震災への対応や、復旧・復興の歩み、得られた教訓を踏まえた現在の取り組みについても説明を加えました。大きな災害を経験したフィリピンの方々にとって、やはり日本の東日本大震災の経験や当時の状況は興味深いものであったようで、多くの参加者がフィリピンの災害対策を進めるうえで日本のアドバイスを求めていました。
続いて、両国の地方自治体関係者から、自治体による防災・災害対応の取り組みが紹介されました。フィリピン側からは、2013年10月にマグニチュード7.2という阪神淡路大震災と同レベルの地震が発生し、大きな被害を受けたボホール州のエドガルド・チャット知事が、その対応について紹介しました。
日本からは、台風や大雨による水害・土砂災害が数多く発生した熊本県の、井芹危機管理防災課審議員が、2012年7月に発生した水害への対応を中心に、防災・災害対応の取り組みを説明しました。災害発生時における国・県・基礎自治体などの役割に応じて、自衛隊・警察・消防・消防団や自主防災組織・民間企業等の関係機関と連携して災害対応を行う様子が説明されました。復旧・復興においては、単なる回復にとどまらず熊本の更なる発展につながる取り組みを進めていることや、災害からの教訓として早い段階で住民に「予防的避難」を促すなど、防災・減災体制の強化の取り組みも紹介されました。
当セミナーの最終プログラムとして、日本側からは講演者の3名、フィリピン側からはアントニア・ロイザガ マニラ気象観測所長、レナート・ブリオン フィリピン内務地方自治省マニラ首都圏地域局長が登壇し、意見交換が行われました。
お互いの国の、防災体制やシステムについて意見交換が行われ、国‐地方自治体‐地域間における連携や各組織同士の広域連携、防災教育の充実など、とりわけソフト面での対策を推し進めることが重要であることが強調されました。
プログラムが終了したのち、フィリピン側主催者であるLocal Government Academyのマリベル・サッセンドンシルリョ校長が、セミナーのまとめを行いました。今後どのように災害対策を進めていけばよいかについて要点をまとめるとともに、両国の災害対策の強化のために、両国の関係をより強め、今後もお互いの知識や技術、経験を共有していくことが必要であることが述べられ、2日間にわたるセミナーは閉会となりました。
大きな災害に見舞われた両国にとって、「災害対応」というテーマは政府・地方自治体関係者の、共通の大きな関心事項となっています。2013年11月に発生した史上最大級の台風「HAIYAN」に襲われたフィリピンでは、その復興過程において多くの課題を抱え、防災体制の整備も喫緊の課題となっています。そのような状況の中、東日本大震災からの復興を図っている日本の取り組みは、参加者にとって非常に参考になった様子で、今後も継続してこのような事業を実施してほしいという声も出るなど、当セミナーは盛況のうちに終了しました。今後も両国の協力関係の継続が期待されます。
なお、今回のセミナーの報告内容や講演資料については、以下の総務省自治行政局国際室のホームページでご確認いただけますので、ご参照ください。
URL:http://www.soumu.go.jp/kokusai/kyoryoku_asia_h26.html
■「日本-フィリピン地方行政セミナー」開催概要
会期 | 2014年5月15日(木)~5月16日(金) | |
開催場所 | マンダリン オリエンタル マニラ ホテル(フィリピン・マニラ) | |
主催 | 日本:総務省 フィリピン:Local Government Academy |
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参加者 | フィリピン内務地方自治省担当者・地方自治体首長及び担当者など 179名
登壇者・来賓・事務局など 約40名 |
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日 | プログラム | 内 容 |
5月15日(木) | 開会式 | ・開会挨拶①:Austere Panadero フィリピン内務地方自治省副長官 ・開会挨拶②:佐々木 敦朗 総務省総括審議官 ・来賓挨拶①:天野 哲郎 在フィリピン日本国大使館次席公使 ・来賓挨拶②:丹羽 憲昭 国際協力機構フィリピン事務所長 ・記念品交換 ・フォトセッション(記念撮影) |
基調講演① | テーマ:日本の地方自治について
講 師:佐々木 敦朗 総務省総括審議官 |
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基調講演② | テーマ:フィリピンの地方分権について
講 師:Atty. Aquilino Q. Pimentel Jr. 元上院議員 |
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ガイダンス | テーマ:発災リスクマネジメントのガイダンス
講 師:植村 哲 総務省自治行政局国際室長 |
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昼 食 | ||
事例発表① | テーマ:日本での防災・減災への取り組みについて
3.11東日本大震災からの復旧 講 師:是澤 優 消防庁国民保護・防災部参事官 |
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事例発表② | テーマ:ボホールでの災害対策の取り組みについて
講 師:Edgardo Chatto ボホール州知事 |
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レセプション | ||
5月16日(金) | 事例発表③ | テーマ:2012年7月12日発生の熊本広域大水害の災害対応
講 師:井芹 護利 熊本県知事公室危機管理防災課審議員 |
意見交換 | パネリスト
日本側:講演者3名 フィリピン側:Antonia Loyzaga マニラ気象観測所長 Renato L. Brion フィリピン内務地方自治省首都圏地域局長 |
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閉 会 |
(関根所長補佐 新潟市派遣)