シンガポール事務所では日本・マレーシア間の新たな交流として、行政研究の分野でマレーシア国内でも有数の実績を誇るマレーシア北大学(Universiti Utara Malaysia)にて、日本の地方自治セミナーを初めて開催しました。当セミナーは今後の日本・マレーシア間の交流可能性を探るとともに、マレーシアの行政システムへの理解を深めること、当事務所職員の英語能力や資質の向上、現地の方々とのコミュニケーションを通じた国際的感覚を習得することを目的としています。
今回セミナーへ協力いただいたマレーシア北大学は、マレーシア北部のケダ州に所在し、タイ国境からほど近い場所に位置しています。経営学部、人文科学部、法・政治・国際学部から成る同大学には全体で約30,000人の生徒が在籍しています。中東など各国からの留学生も多いことから、構内には学生向けの寮のほか各種施設が充実しています。今回は同大学から法・政治・国際学部にて行政学を専攻する学生40名、学部の先生10名が当セミナーへ参加しました。
当日は当事務所職員4名が講演者として演台に立ち、それぞれ日本の地方自治に関するテーマで、英語にてプレゼンテーションしました。プレゼンテーション後の質疑応答では、日本での税率設定や税金徴収などの税システム、日本で進められている地方分権の考え方や現状、日本の地方自治体の将来展望、マレーシア・日本間の姉妹自治体の推進など多数の質問や意見が寄せられ、日本の地方自治に対する興味、関心が窺えました。
マレーシアの地方自治研究の第一人者でもあるファン・シィウ・ノイ先生より、マレーシアの地方自治に関して講義が行われました。ファン先生はクレアの事業の1つである「海外自治体幹部交流協力セミナー」にも以前参加された経験があり、日本の文化や、日本の地方自治に関しても見識の深い方です。今回は、マレーシアの統治機構と地方自治システムをテーマに講義いただきました。
マレーシアは立憲君主制であり、国家の元首は国王となります。国王は首相の任命や国会の解散の同意などの権限を有しています。また、立法権は国会に属し、国会は国王と上院、下院からなる両院により構成されています。首相については、国王が下院にて多数の信任を得た議員を首相として任命しています。
また、州政府は日本の自治体と異なり、連邦を構成する準国家です。各州は元首を有し、独自の州憲法を制定しています。州の立法権は、州の元首と一院制の立法議会に属します。市町村レベルでは選挙は実施されず、各州は自らの権限に基づき、州内を区分し必要な行政機関を設置しています。
日本と異なるシステムである連邦制システムや州政府による地方自治の仕組みは、マレーシアの地方自治を理解する上でポイントとなる事項です。
今回は当事務所職員1名、学生5名を1グループとして、各グループでのディスカッションも行いました。ディスカッションでは日本の教育行政や、日本の地方自治体で抱えている課題、少子高齢化問題、経済・産業開発など、多岐に渡るテーマについて話し合われました。学生から出される意見や質問に対して、職員も自らの知識や経験を踏まえて熱心に説明したほか、学生からマレーシアでの現状も聞くことができ、マレーシア・日本における相互理解を図ることができました。
今回初めての試みとなった現地大学と連携したセミナーの開催。当セミナーを通じて、文面だけでは分からない相互の現状を認識でき、お互いに得ることの多い充実した交流となりました。セミナー実施後は、マレーシア北大学と今後も継続した交流事業を実施することについて確認し、引き続き連携強化を図ることで一致しました。シンガポール事務所では、今後もASEAN及びインドの地方自治関係機関との新たなネットワークの構築・強化に取り組み、日本の自治体の海外活動をサポートしてまいります。
(三原所長補佐 鹿児島県派遣)