2015年5月14日(木)、15日(金)の2日間にわたり、日本国総務省とフィリピン地方行政学院(Local Government Academy)の共催で「日本-フィリピン地方行政セミナー」がマニラで開催されました。
「アジア地方行政セミナー」は、地方行政に携わる幹部及び職員を対象に、1999年から総務省が東南アジア各国の協力を得て、当該国が抱える課題・関心事項をテーマに講演や意見交換などを実施しているものです。13回目となる今回は「観光振興を通じた地域経済の活性化」をメインテーマとし、昨年同様フィリピンで開催されました。シンガポール事務所は、総務省とフィリピン関係機関との間の連絡調整及び当日の運営支援を行いました。
国内及び海外からの観光誘客のために地方の観光資源をどのように活用しPRすればよいかは、フィリピンの自治体の大きな関心を集めており、今回のセミナーでは自治体の首長及び担当職員125名の参加がありました。
冒頭挨拶でフィリピン内務地方自治省のオーステロ・パナデロ副長官は、地方の経済活性化に寄与する観光政策について、両国が双方の知識や経験を互いに学び合い、持続可能な観光を目指すことを期待すると述べました。
当セミナー最初のプログラムとなる基調講演では、両国の観光行政の仕組みや振興策に関する講演が行われました。まず、三輪自治大学校長が日本の地方自治の制度や観光に関する総合的な行政の取り組みなどについて講演しました。参加者からは観光振興策を進めていく上での政府と地方自治体の関係性や連携方法に関する質問が出されました。
続いて、フィリピン側からは、フィリピン観光省アルトゥーロ・ボンカト事務次官が、観光産業発展のために政府が取り組んでいる2016年までの計画概要やインフラ整備などの状況について講演しました。
基調講演に続いて、フィリピン側から3名、日本側から2名の地方自治体関係者が各自治体による観光政策への取り組みを紹介しました。日本側からは、飯田市観光課の鈴木係長が体験型教育旅行への取り組み例として、農家民泊による農業体験とその受け入れ体制について説明しました。参加者からは農家の受け入れ可能日数や対象者などについて質問があるなど、教育旅行について高い関心が示されました。
また、高松市観光交流課の吉峰課長補佐からは、地域資源を生かした新たな観光施策として、市内の島々で行われる瀬戸内国際芸術祭の取り組みについて説明がありました。参加者からは島民の理解をどのように得たのかなどの質問がありました。
フィリピン側からはビガン市のエヴァ・メディナ市長が、1999年にユネスコの世界文化遺産に登録された同市の歴史建造物について、その保存や周辺環境の整備状況、1年を通じて観光客が訪れる仕組みづくり、観光産業の発展による市民の生活向上を図る取り組みについて説明しました。
当セミナーの最終プログラムとして、日本側からは講演者の3名、フィリピン側からはディジー・フェンテス南コタバト州知事、アナ・ボナグア地方自治開発局長、ジョセフィン・カバルスボホール州観光担当がパネリストとして登壇し、意見交換を行いました。パネリストや参加者からは、政府と地方自治体、行政と民間事業者の連携方法について意見が出され、官民一体となった観光政策や地域経済の活性化策を進めることの重要性について話し合われました。
プログラムが終了した後、フィリピン側主催者である地方行政学院調査・政策振興課のダフィネ・パーネル課長がセミナーの総括を行いました。フィリピンの自治体が今後どのような観光政策にチャレンジしていけばよいかについて要点をまとめるとともに、両国の観光振興による地域経済の活性化のために、お互いの関係をより深め、今後も知識や経験を共有していくことが必要であることが述べられ、2日間にわたるセミナーは閉会となりました。
日本の自治体が取り組む観光政策は、参加者にとって非常に参考になった様子で、「今後も継続してこのような事業を実施してほしい」「次回は日本で研修視察を実施してほしい」という声も出るなど、当セミナーは盛況のうちに終了しました。今後も両国の協力関係の継続が期待されます。
なお、今回のセミナーの報告内容や講演資料については、以下の総務省自治行政局国際室のホームページでご確認いただけますので、ご参照ください。
URL:http://www.soumu.go.jp/kokusai/kyoryoku_asia_h27.html
■「日本-フィリピン地方行政セミナー」開催概要
会期 | 2015年5月14日(木)~5月15日(金) | |
開催場所 | クラウンプラザ マニラ ガレリア ホテル(フィリピン・マニラ) | |
主催 | 日本:総務省 フィリピン:地方行政学院(Local Government Academy) |
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参加者 | フィリピン内務地方自治省担当者・地方自治体首長及び担当者など 125名登壇者・来賓・事務局など 44名 | |
日 | プログラム | 内 容 |
5月14日(木) | 開会式 | ・開会挨拶①:Austere Panadero フィリピン内務地方自治省副長官 ・開会挨拶②:三輪 和夫 自治大学校長 ・来賓挨拶①:北川 達生 在フィリピン日本国大使館広報文化班長 ・来賓挨拶②:丹羽 憲昭 国際協力機構フィリピン事務所長 ・記念品交換 ・フォトセッション(記念撮影) |
基調講演① | テーマ:日本の地方公共団体における観光行政
講 師:三輪 和夫 自治大学校長 |
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基調講演② | テーマ:発展のための観光:フィリピンの枠組み
講 師:Arturo P. Boncato Jr. フィリピン観光省事務次官 |
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昼 食 | ||
事例発表① | テーマ:飯田市における体験型観光の取り組みについて
講 師:鈴木 義光 長野県飯田市産業経済部観光課広域観光係長 |
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事例発表② | テーマ:ビガン市の遺産保全:発展の手法として
講 師:Eva Marie S. Medina ビガン市長 |
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事例発表③ | テーマ:成長戦略のための観光促進
講 師:Jed Patrick E. Mabilog イロイロ市長 |
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レセプション | ||
5月15日(金) | 事例発表④ | テーマ:文化的遺産を活用した観光施策
講 師:吉峰 秀樹 香川県高松市創造都市推進局文化・観光・スポーツ部観光交流課長補佐 |
事例発表⑤ | テーマ:観光発展への南コタバト州の戦略:事例研究
講 師:Daisy P. Avance-Fuentes 南コタバト州知事 |
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フィリピン地方自治体向け観光ガイドブック案内
説明者:Warner M. Andrada フィリピン観光省企画・商品開発課長 |
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昼 食 | ||
意見交換 | モデレーター Daphne Purnell フィリピン地方行政学院調査・政策振興課長パネリスト 日本側:講演者3名 フィリピン側:Daisy P. Avance-Fuentes 南コタバト州知事Anna Liza F. Bonagua 地方自治開発局長 Josephine R. Cabarrus ボホール州観光担当 |
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閉 会 |
(佐々木所長補佐 札幌市派遣)