2016年8月25日(木)、26日(金)の2日間、インドネシアのジャカルタで、総務省の主催により、インドネシア国家行政院(NIPA)及びクレアシンガポール事務所の協力の下、「アジア地方行政セミナー」が開催されました。総務省は1999年から東南アジア各国の協力を得て、地方行政職員を対象として当該国が抱える課題・関心事項をテーマに講演や意見交換を行い「地方行政セミナー」を実施しています。インドネシアでは2年連続4回目となります。今年度は「村落開発」をテーマに、両国の自治体の首長や職員による講演が行われました。
日本で「村」とは最小基礎自治体を指しますが、インドネシアで一般に言われる「村」は日本の「集落」のような人と家屋の集まりを意味し、行政機能を持ち合わせていません。現在の日本の約180の村は、明治の大合併前は町村合わせて、約7万を超えていました。その当時の「村」のイメージに、インドネシアの村は近いのかもしれません。
明治以降、日本の基礎的自治体の形成は3度の大きな合併を経て、進められてきました。インドネシアの地方自治体は今まさにその形成過程にあるといえます。
日本からは、「基礎的自治体の形成過程」、「予算編成から決算までの財政管理制度」及び「特産品を活用した地域活性化の取組」について紹介されました。集まった約150名の参加者は熱心に耳を傾け、講義後の質疑応答では、「合併を進めていく中で、村が従前から持つ権利をどう保護したのか」や「最低限の公共サービスすら未整備の中、どう住民参加を促したのか」という鋭い質問もありました。
最後に両国講演者によるパネルディスカッションが行われ、参加者から各講演に対する質問・意見が多く寄せられました。特に印象的だったのは、「日本は誰がリーダーとなっても継続できるような強力なシステムが基盤にある。一方、インドネシアでは成功事例は強力なリーダシップを持ったリーダーによるものであり、リーダーが変わっても継続されるようなシステム作りが重要である」という意見です。日本とインドネシアでは人口規模や人口構造、政治システムや経済規模など異なる点は多くありますが、日本の地方自治体の行政システムがどう形成され、現在どう機能しているのかという講演を受け、インドネシアの地方自治体が今後どう変わっていくのか期待されます。
(朽網所長補佐 埼玉県派遣)
- 2016年度アジア地方行政セミナー概要 -
「東南アジアにおける自治体の海外展開の方策について」
日時:1日目 2016年8月25日(木)8:45~19:00
2日目 2016年8月26日(金)8:30~11:45
場所:インドネシア国家行政院
(The National Institute of Public Administration(NIPA))
(Jl. Veteran No. 10 Central Jakarta, 10110)
主催:日本国総務省
協力:インドネシア国家行政院、クレアシンガポール事務所
参加者:インドネシア行政職員 のべ約150人
日程:以下のとおり(参加者敬称略)
【1日目】
①開会式 8:45~9:45
■インドネシア共和国国家斉唱及びお祈り
■インドネシア側代表挨拶:国家行政院副長官 トリ・ウィドド
■日本側代表挨拶:総務省大臣官房審議官 宮地 毅
■来賓挨拶:
在インドネシア日本国大使館次席公使 本清 耕造
国際協力機構インドネシア事務所所長 安藤 直樹
■基調講演:インドネシア農村大臣 エコ・プトロ・サンジョヨ
■写真撮影
②Lecture1 10:30~12:00
■講演者: 総務省大臣官房審議官 宮地 毅
■テーマ: 「集落」から「市町村」へ~日本の基礎的自治体の形成過程~
③Lecture2 13:00~14:00
■講演者: ASEC Indonesia 幹部/TRUBUS INDONESIA 取締役 バンバン・イスマワン
■テーマ: Innovation in developing village owned enterprise as social enterprise
④Lecture3 14:00~15:00
■講演者: 新上五島町財政課 課長補佐 近藤 徳利
■テーマ: 新上五島町の予算編成から決算まで
⑤Lecture4 15:30~16:30
■講演者: ボジョネゴロ県知事 スヨト
■テーマ: Community empowerment strategy and transformation in the public service in Bojonegoro
⑤レセプション 17:00~19:00
【2日目】
①Lecture5 8:30~9:30
■講演者: 滋賀県商工観光労働部商工政策課 廣瀬 淳子
■テーマ: 特産品を活用した地域活性化と自治体の役割
②パネルディスカッション 10:00~11:30
■日本側登壇者: 総務省大臣官房審議官 宮地 毅
新上五島町財政課 課長補佐 近藤 徳利
滋賀県商工観光労働部商工政策課 廣瀬 淳子
■インドネシア側登壇者: バンバン・イスマワン
スヨト
■モデレーター: 総務省国際室長 伊藤 正志
国家行政院改革推進及び能力構築センター長 PMマルパウン
③閉会式 11:30~11:45
■閉会の挨拶: 国家行政院副長官 トリ・ウィドド