シンガポール保健省(MOH)は2024年9月30日、公的医療補助制度を拡充す
ることを発表しました。この改定は同年10月1日から適用され、改定内容は次
の3点です。
まず、各種医療補助金の受給基準となる世帯収入が見直されました。MOHはこ
れまで、シンガポール居住者の医療費を支援するため、所得調査に基づいて補
助金や助成金を支給してきましたが、今回の改定により、世帯収入と医療費の
変化を反映するため毎月の 世帯一人あたりの収入(PCHI※1) 基準を使用す
ることとしました。また、補助金の受給基準も、100~800シンガポールドル
(約11,140~89,120円)引き上げられました。このため、最大で110万人のシ
ンガポール居住者がより多くの補助を受けられるようになる見込みです。
次に、より多くのシンガポール居住者が、自らの希望に応じて尊厳と安らぎを
持ってこの世を去るという願いをかなえられるよう、緩和ケアサービスへの補
助金が増額されました。これには、入院ホスピス緩和ケアサービス、在宅緩和
ケア、デイホスピスが含まれます。
さらに、地域病院(※2)への補助金の枠組みが強化されました。地域病院
に対する補助金を急性期病院(※3)と同額に増やすことにより、病院の患者
の経済的負担が軽減されるとともに、急性期病院から地域病院まで一貫したケ
アが受けやすくなることが期待されます。
シンガポールでは2023年から「Healthier SG」という政策を展開し、高齢化
に対応しています。今回の公的医療補助制度の拡充も、病気になって初めて病
院に行く従来の医療から、定期的にかかりつけ医の診察を受けやすくして、加
齢に伴う慢性疾患を予防する医療にかじを切っているようです。
※1:毎月の PCHI は、世帯の総月間総収入を世帯内で一緒に暮らす家族の総
人数で割って計算されます。世帯の総月間収入には、基本雇用収入、貿易/自営
業収入、残業手当、手当、現金賞与、手数料、ボーナスが含まれます。
※2:急性期病院からの退院後に、短期間の継続ケアを必要とする患者に対応
する病院。コミュニティ病院で提供されるケアの種類には、医療、看護、リハ
ビリテーションケアが含まれます。
※3:入院患者に対し、重篤な病気や疾患、外傷の治療、または手術からの回
復中に医療サービスを提供する病院。
シンガポール事務所 所長補佐 名島
<参考文献・引用文献>
・シンガポール保健省(MOH)ウェブサイト
https://www.moh.gov.sg/news-highlights/details/up-to-1.1-million-singapore-residents-to-benefit-from-higher-subsidies-from-1-october-2024
https://www.healthiersg.gov.sg/