【シンガポール事務所】インドのデジタル化を支えるアーダール(Aadhaar)

 インドでは現在急速なデジタル化が進んでいると言われています。例えば、小さな
お店でもQRコード決済などのキャッシュレス決済が行き届いています。こういったデ
ジタル化を支えているのが、インド版マイナンバーともいえる「アーダール(Aadhaar)」
です。ここでは、そのアーダールについてご紹介します。
アーダール導入以前のインドでは、身分証明はとても困難でした。そのため、貧困層
や社会から疎外された人々は政府からの給付金や補助金などを利用できなかったと言
われています。また、さまざまな公共機関や民間事業者が住民にサービスを提供する
ために身分証明書の提示を要求しても、認証された身分証明書がないために虚偽申告
や施設の不正利用などが発生していたとも言われています。
 これを解決したのが、2010年に導入された12桁の個人識別番号アーダールです。登
録には、氏名、生年月日、住所といった人口統計学情報や写真、指紋といった生体情
報が必要になります。登録後は、オンラインで本人認証が可能です。2023年3月末現
在で約12.9億のアーダールが有効で、同時期現在のインド推定人口約13.8億人の90%以
上に相当します。
 アーダールがインドのデジタル化を支えている理由は、インド政府がアーダールに
よる身分認証などを軸とした一連のAPI(アプリケーション同士を連携させるための仕
組み)を一般に公開し、州政府や民間事業者などがそのAPIを使って各自で開発したア
プリケーションとアーダール認証等を連携させることが可能だからです。なお、この
一連のAPIのことは「インディアスタック」とも呼ばれます。
 冒頭で述べたQRコード決済の技術は、2016年に導入されたUPI(United Payments Interface)
というAPIを民間事業者が活用しています。なお、QRコード決済には銀行口座が必要で
すが、インド人の銀行口座保有率もアーダール(インディアスタック)により飛躍的
に向上しています。成人銀行口座保有率は2011年には35%であったものが、2021年には
78%と10年間で2倍以上になっています。
 現在世界一の人口を抱えるインドのアーダールを軸としたデジタル政策にも是非注
目してみてください。
                      シンガポール事務所 所長補佐 辻
<参考文献・引用文献>
・Unique Identification Authority of India「UIDAI ANNUAL REPORT 2022-23」
https://a16.hm-f.jp/cc.php?t=M665947&c=52219&d=a05a
・India Stackウェブサイト
https://a16.hm-f.jp/cc.php?t=M665948&c=52219&d=a05a
・The Global Findex Database 2021(Global account ownership)
https://a16.hm-f.jp/cc.php?t=M665949&c=52219&d=a05a