日本のマイナンバーに相当する国民登録制度は、シンガポールでは既に英国統治下の1948年に不法移民等を排除する目的で導入され、独立後の1966年に現在の制度になりました。
満15歳以上のシンガポール人及び永住権保有者(PR)に対しては、出生届の際に割り当てられる固有の識別番号が記載された国民登録カード(NRIC)が発行されます。識別番号は、固有の9桁のアルファベットと数字から構成されています。NRICの表面には、識別番号のほか、証明写真・氏名(英語・母国語併記)・民族(中華系、マレー系等)・ 生年月日・性別が、裏面には、指紋・国籍(PRの場合)・出生国・発行日・住所が記載されています。なお、NRICは、出入国管理を所掌している入国管理庁(ICA)が所管しています。
シンガポールの人口の約3割を占める外国人居住者に対しては、外国人登録番号(FIN)が付番されます。短期・長期滞在者及び学生のFINはICAが所管しているのに対して、就労者のFINは、雇用・労働環境の整 備、労働人材育成を担当している人的資源省(MOM)が所管しています。
今では、不法移民の排除だけでなく、行政サービスの利便性を向上させる電子政府化の推進のため積極的 に活用されています。情報通信開発庁(IDA)は、ICAとMOMの登録データを活用した公的個人認証サービス(Sing Pass(シン グ・パス))を整備しており、これによって各自がインターネットで納税や社会保障をはじめ630項目に及ぶ 行政サービスに関する情報の閲覧及び手続きを行うことが可能となっています。現在、全人口の約6割が登録し、年間5,700万件のやりとりがオンラインで行われています。
昨年4月にもNRICの偽造事件がありましたが、NRICの不正な利用は、国民登録法に基づき、禁錮10年以下 若しくは罰金1万シンガポールドル以下、又はその双方が課されます。
NRIC及びFINは、銀行口座の開設、不動産の売買等様々な民間の経済活動において本人確認のためにも広く 使用されていますが、2014年に施行された個人情報保護法により、適切な個人情報の収集・管理が事業所に対 して求められています。この点、むしろ個人のスマホのアプリからの個人情報流出に対する懸念の声もあります。
(シンガポール事務所 鍋岡調査役)