シンガポール人がホーカーセンター(屋台街)で食後に食器を片づけないことは来星当初の日本人にとって驚くことの一つではないでしょうか。後で清掃のおじさんが片付けてくれるのですが、日本人としては少し気持ちが悪いもの。なので、日本人は食後は食器返却の棚に返そうとするのですが、気を付けていただきたいのが「2種類の棚」です。よく見ると「Halal」と「non-Halal」とそれぞれ書かれています。そうです、ムスリム(イスラム教徒)が食べることのできるハラル料理とそれ以外の料理 の食器が混ざらないようにしているのです。食事の内容のみならず食器まで分けるとは厳格だなと思いきや、どこのホーカーセンターに行っても同じで、食器の色を分けるほど念を入れているところも。さすが人口の15%がムスリムのシンガポール。スーパーの精肉コーナーにも「Halal」と「non-Halal」の表示、観光名所の一 つのアラブストリートには「ハラルストリート」、かっぱえびせんやマクドナ ルドにも「ハラルマーク」、とそこかしこにハラルがあふれ、ムスリムへの配 慮がうかがえます。
クレジット会社等の民間企業がムスリムフレンドリーな旅行先を国別にランキ ングしている「世界ムスリム旅行インデックス」では、シンガポールは非イス ラム圏としてはトップの9位。一方、日本は「食事の選択肢とハラル確実性」の項目の低さが災いして37位でした。ただ、シンガポール周辺のイスラム圏の国に出張に行くと、ムスリムの方の中でも国や個人によって敬虔さが異なることも感じます。食べ物についても個人差があって、常に厳格にハラルを求める人から旅行先で は少し緩める人まで様々です。私もそうでしたが、日本にいるとムスリムの方をお迎えする時には身構えてしまうものです。しかし、こういった個人差があることを意識して、堅くなり過ぎずにまずは 「質問(何か食べられないものはありますか?)」と「説明(この食べ物には ~~が入っています)」から始めてはいかがでしょうか?
(シンガポール事務所 加藤所長補佐)