私たち日本人に根付く公共の場でポイ捨てをしてはいけないという意識はどの ように育まれているのでしょうか。
シンガポールはゴミのポイ捨てに罰金を科している国として有名ですが、2015 年にポイ捨てにより罰金刑を科された者が過去6年間で最多となったと報道さ れました。2014年4月にポイ捨てに対する罰金を初犯で最高S$2,000(約16万円、2016年6月2日 現在S$1=約80円)に引き上げましたが、2015年は2014年より32%も罰金者数が増えています。このような結果を受け、シンガポール環境委員会の理事は、「自宅や会社ではポイ捨てをしないのに、公共の場でするのは思慮の浅い反社会的な行動だ。」 と憂慮を示しています。
シンガポールでは、多民族・多宗教国家で外国人在住者が多く、価値観が多様なため、秩序を維持する方法として罰金制度を設けてきました。しかし、近年のポイ捨てによる違反者数の増加を受け、幼少期からのモラル教育の重要性に目を向け始めています。モラル教育として日本の学校のように生徒たちに掃除をさせる取り組みにも注目が集まっています。健全な社会を維持するには、法的に厳しく罰することよりも、社会性の備わった人づくりが重要なのではないかとの問題提起がシンガポールでもなされています。
(シンガポール事務所 押川所長補佐)