2016年7月19日、シンガポールとマレーシアの首都・クアラルンプールを結ぶ高速鉄道計画に関する覚書を両国政府が締結し、2026年までの開業を目指してスタートを切りました。
高速鉄道(HSR)はシンガポールとクアラルンプール間約350kmをわずか90分で結びます。これは東京-名古屋間とほぼ同距離で、既存の交通機関利用時の半分以下に時間を短縮し、手軽に日帰り移動することができるようになります。
HSRの開業は両国間における友好交流の増進に寄与するとともに、シンガポールとマレーシアの経済的な相互依存性をさらに深め、ASEAN経済共同体の「中心」としての効果を期待されています。
ASEANをリードする2ヶ国の首都圏を結ぶことから、ビジネスや観光への波及効果など「ヒト・モノ・カネ」の流れを変え、2大商圏が一体化された経済圏となることが見込まれます。日本の地方自治体は、観光インバウンド促進や地域産品の販路拡大などについて、この動きを踏まえたマーケティング戦略を構築していくことが求められます。
計画では、車両や信号、線路といった関連システムの管理を担う事業、首都間を直通で結ぶ急行やシンガポールとマレーシアの国境を往来するシャトル便の運営事業、マレーシア国内の主要都市に停車する列車の運営事業の3つに分割し、各々国際入札を実施するとしています。日本は来年中と見込まれる国際入札に向けて、国土交通大臣が両国内でトップセールスを行い、新幹線技術の安全性をアピールするなど、官民一体で着実に準備を進めています。日本の高い技術がASEANの更なる発展に貢献することが期待されます。
(シンガポール事務所所長補佐 佐々木)