みなさんは、「伝統工芸」にどのような印象をもっていますか?
伝統工芸と聞くと、敷居が高く、少しカタい印象を持ってしまう方もいるかもしれません。しかし、そんな日本の伝統工芸が海外では思わぬ形で、現地の人々の心を掴んでいることがあります。
シンガポールのデザイナーが経営する有名ギャラリーショップの「Supermama」 は、創業当時、多くの日本の伝統工芸品を輸入し販売していましたが、シンガポール在住の日本人には買ってもらえても、現地の人にあまり興味を持たれることはありませんでした。しかし、その打開策として、デザインをシンガポールで行い、生産を日本で行うようにしたことで、現地の人の間でも非常に人気のある製品へと生まれ変わったのです。
その代表的な製品として、シンガポールを象徴するアイコンがデザインされた佐賀県の有田焼があります。白磁に呉須の染付けという伝統的な手法を用いながらも、シンガポール建国の父である故リー・クアンユー元首相やマーライオン、今やシンガポールを代表するランドマークとなったマリーナベイサンズなど「ザ・シンガポール」といった絵柄が散りばめられ、そのデザイン性も日本の「わび・さび」といった質素で静かなものではなく、派手好きなシンガポール人の感性に合ったデザインのものが多く見受けられます。これぞ”和製”ならぬ、”和星”の製品と呼べるのではないでしょうか。
このように地方の伝統を守りながらも、海外のエッセンスを取り入れ、次世代へ継承していくことが、ますますグローバル化が進む世界において、その地方のプレゼンスを高める上で重要な役割を果たすものと期待されます。
(シンガポール事務所所長補佐 新海)