今や日本のポップカルチャーを代表するアニメや漫画が、海外でも若者を中心に人気を集めていることは、既に周知の事実だと思います。それは、ここシンガポールでも同様です。シンガポールの大学で日本語を学ぶ学生に、日本語を学びたいと思ったきっかけを問うと、多くの学生がアニメや漫画と答えます。
街中では、日本のアニメや漫画などのキャラクターのフィギュアやグッズを取り扱うお店が、ほとんどのショッピングモールに入居しています。さらに、「ポケモン」や「ハローキティ」、「ポムポムプリン」といった日本でもおなじみのキャラクターをモチーフとしたカフェが近年続々とオープンするなど、シンガポールにおける日本のアニメや漫画のプレゼンスは非常に高いものとなっています。
アニメや漫画と聞くと、どうしてもオタクを連想してしまいますが、世界学力ランキング一位で能力主義の、このシンガポールにもはたしてオタクはいるのでしょうか。答えは、イエスです。シンガポールには、アニメや漫画などのコンテンツを発信する大型イベントが年に3回ほど開催されており、シンガポールのオタクたちで会場は異様な熱気に包まれます。その中のイベントの一つに私が行った際は、いわゆる萌え系と呼ばれる美少女キャラクターや腐女子に人気の男性キャラクターなどの物販コーナーに長蛇の列ができ、ライブ会場では、オタ芸コールが響き渡っていました。そして、どこから湧いてきたのかと言わんばかりの多くのコスプレイヤーが会場内外でひしめき合っていました。
このような人気を背景に、シンガポール・ポリテクニックでは、クールジャパン機構の出資により、日本のアニメや漫画が大好きな若者たちをクリエイターとして育成し日本のコンテンツ業界の国際展開につなげる講座も開講されました。
昨年、世界的に大ヒットした日本のアニメ映画「君の名は。」は、シンガポールでも人気を博しました。その影響から、聖地巡礼と称し、映画の舞台となった岐阜県へ旅行をするシンガポール人が増えているそうです。2016年は訪日外国人観光客数が、2403万9000人と過去最高を記録しましたが、政府は「2020年に4000万人」の目標を掲げています。この大きな目標を達成するためには、このように海外の人をも魅了する日本のアニメや漫画の影響力は欠かせないでしょう。
(シンガポール事務所所長補佐 新海)