テレビや新聞、雑誌などで「Fintech(フィンテック)」という言葉を耳にする機会が多くなってきました。これは、金融を意味する「Finance(ファイナンス)」と、技術を意味する「Technology(テクノロジー)」を組み合わせた造語で、IT技術を使った新たな金融サービスを指します。
フィンテックでは、決済・送金、資金管理・運用、セキュリティ、保険などの分野において様々なサービスが登場しています。スマートフォンなどの携帯端末での金融取引を可能にするなど、その利便性や快適性が利用者に支持され、世界的に急成長している市場であることから、近年、日本においても注目が集まっています。
今回は、フィンテックの推進を国家戦略の1つとして位置づけ、新たな産業の発展に結び付けようとするシンガポールにおけるフィンテックの最新の事例を簡単に紹介します。
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近年、インターネットバンキングの不正送金による被害が後を絶ちません。BankGuardが提供するSuperMatrixでは、従来の乱数表で用いていた英数字に代わり画像を使用することで不正取引件数が減少することが期待されます。既存のセキュリティシステムであるワンタイムパスワードと比較して5分の1という低コストで導入することが可能なうえ、全ブラウザ・全OSに対応していることから、導入・運用しやすいことが特徴です。
2017年2月にはシンガポールのポリテクニック(国立技術高等専門学校)5校とシンガポール・フィンテック協会が、フィンテック業界で活躍する人材育成を目的に「教育機関とフィンテック企業の連携を深めるための覚書」を締結しました。
フィンテック人材需要に対応できる体制を既に整え始めるなど、今後ともフィンテックにおけるシンガポールの動向から目が離せません。
(シンガポール事務所所長補佐 安田)