今年の4月にシンガポールに赴任して驚いたことが二つあります。一つは、道路にゴミが落ちておらず、街のいたる所にゴミ箱が設置されていること。人通りの多いところでは、数十メートルおきにゴミ箱があると言っても過言ではありません。もう一つは、コンドミニアムにダストシュートがあり、リサイクルできるもの以外の家庭ごみはこのダストシュートに捨てられることです。
街中に設置されているたくさんのゴミ箱とダストシュートに捨てられたゴミは、専門業者により毎日収集され、分別されます。不燃ゴミは直接処分場に、可燃ゴミは焼却された後、焼却灰となって処分場に送られ、最終的には埋立て処理をされます。この埋立処分場がシンガポールから8km南に離れているセマカウ島です。政府は、このセマカウ島の処分場としての使用年数を延ばすとともに、限りある資源の節約と環境保護を目的に「3R」によるゴミの減量に取り組んでいます。
しかし、スーパーでは、購入した商品を種類ごとにレジ袋に詰めるため、大量のレジ袋を持ち帰ることになります。また、フードコートやホーカーズではテイクアウトによるプラスチック容器が毎日使い捨てにされています。これらは、長年のシンガポールのライフスタイルに基づくものであることから、市民の意識改革を行うことは簡単ではないかもしれません。
廃棄物処理分野に関する取り組みは、ASEAN諸国においてはまだ十分とは言えません。したがって、日本の自治体職員が持つ知識と経験、技術を有効に発揮する場でもあり、例えば、北九州市では、インドネシアのスラバヤ市と2012年に環境姉妹都市を締結し、そのプログラムの一環として、北九州市内の中小企業との連携により、回収されたゴミから有価物(金属類、紙くず等)を抽出するとともに、それ以外のゴミを堆肥化して、それらの販売の事業化とゴミの減量化に成功しました。
クレアでは、自治体と連携し、日本の自治体職員を海外の地方自治体等の要請に基づいて、自治体国際協力専門家として派遣しています。各自治体におかれては、海外の自治体における行政の質の向上に寄与するとともに、海外の自治体等との友好協力関係を促進するために、専門家派遣事業にご協力ください。
(シンガポール事務所所長補佐 佐々木)