健康志向の高まるシンガポールでは、近年、生野菜をサラダとして提供する飲食店が増え、ランチの時間帯には行列ができています。では、この土地の少ないシンガポールにおいて、野菜はどの程度生産されているのでしょうか。
シンガポールの食料自給率は10%未満と言われており、野菜の多くも輸入に頼っています。ただ、全く農業をしていないわけではありません。国内6か所に農業団地が設定されており、そこで葉物野菜や鶏卵等の生産が行われています。
変わり種だと、食用のカエル(!)を養殖している所もあります。「made in Singapore」の食べ物は、現地のスーパーに普通に売られているのです。
一方で、こういった我々が想像する「普通の農業」以外にも、様々な農業の在り方を模索しているのも、シンガポールの特徴です。
例えば、アルミ棚に野菜を置いて機械で上下に動かすことで日光と水分とを摂取させる「垂直農園」というシステムがあります( https://www.skygreens.com/ )。
また、日系企業が屋内工場で生産している野菜が現地のスーパーで売られていたり、政府と共同で都市部の建物屋上に農業用ハウスを設置し都市型農業モデルの開発を進めたりもしています。
そのほか、シンガポールを代表する商業地の一つであるオーチャードのとあるビルの屋上でも野菜の栽培が行われています。ここでは、野菜の栽培を通して人々が交流する機会を提供しており、新たな農業の形としても注目を集めています( https://comcrop.com/#about )。
現在、シンガポール政府としても、限られた土地の中で食料自給率の向上を目指しており、新しいテクノロジーを利用して生産性を高め、既存の農業ビジネスを更に拡大させたいと考えています。
日本がこれまで培ってきた農業に関する様々なノウハウや、日本の企業が持つ優れた技術力等は、今後のシンガポールの農業にとっても魅力的と言えるのではないでしょうか。
同時に、少ないながらも様々な形で行われている農業の現場は、「持続可能な発展」を目指すシンガポールにおいて、環境や自然、あるいはテクノロジーやコミュニティの在り方について考えることのできる貴重な存在なのかもしれません。
(シンガポール事務所所長補佐 上谷)