LGBTの権利拡大は世界的な動きと言えるでしょうか?欧米や日本の状況を見て いるとそのように感じられるかもしれません。しかし、ここ東南アジアでは、 LGBTの問題は日本以上にセンシティブであると言えます。
先日、インドネシア空軍の担当者が「モラルに反する行為をしたすべての兵士は追放された」とツイートしたのに対し、一人のフォロワーが「LGBTはどうな るのか?」と返信したことから、炎上しました。空軍の担当者はLGBTを「セン シティブ」としながらも、「軍隊には強く、心も体も健康な人間が必要」とし、一貫してLGBTを認めない姿勢でした。
また、マレーシアのトレンガヌ州が、トランスジェンダーの女性を対象にコンバージョン・セラピー(※)を実施する計画を明らかにし、大きな議論に発展 しました。
インドネシア空軍や、トレンガヌ州の例でも、イスラム教の戒律が大きく影響 しています。インドネシア空軍担当者は「同性間での性行為は罪ではないか?」 と訴え、トレンガヌ州も「セラピーには医療と心理、宗教の専門家が関わっている」と発言しています。これらの例は、単純に人権侵害であると批判して良い問題なのでしょうか。宗教を個人的にも社会的にも拠り所とする彼らの文化や価値観を否定しているこ とにならないのか?それぞれの国に尊重すべき歴史や伝統的な文化があることを考えると、本当に難しい問題であり、我々も活動するにあたって留意する必 要があります。
しかし、こういった問題について発言することさえ難しかった時代から比較すると、少しずつですが変化してきていると言えるかもしれません。
(※)コンバージョン・セラピー 性的指向の転換を目的とする治療法
(シンガポール事務所所長補佐 杉田)