様々な人種が共生するシンガポールには、民族融和の促進と国民の社会的な結束を育む場として、各地区にコミュニティクラブ(Community Club)が設置されています。コミュニティクラブは、シンガポール文化社会青年省(Ministry of Culture, Community and Youth)傘下の人民協会(People’s Association)によって設置され、コミュニティクラブ運営委員会(Community Club Management Committee)が実際の管理・運営に当たっています。運営委員会の実行委員は、地区の住民の中からボランティアで選ばれます。
2019年現在で108箇所に設置されているコミュニティクラブには、各施設によって異なりますが、地域のニーズに応えた様々な設備(図書室、調理室、バスケットボールコート、ダンススタジオなど)が備えられています。加えてコミュニティクラブでは、若者からお年寄りまで幅広い年齢層を対象にしたスポーツ、料理、編み物などの様々な教室や、バドミントン大会やバザーなどのイベントが開催されており、生涯学習や地域の交流の場として、日本でいうところの公民館に近い役割を果たしています。
これらの教室やイベントへの参加は、人民協会の運営する「OnePA」というサイトから、簡単に行うことができ、地区外の住民や我々のような外国人も参加できるため、英会話教室などに参加し、英語を学びつつ現地のシンガポーリアンとの交流を楽しむ日本人もいます。教室等への参加には、参加費が必要な場合が多く、徴収した参加費は、政府からの補助金と合わせて、施設の修繕や改修等に充てられます。
コミュニティクラブにおけるこうした取り組みには、地域の課題に地域住民も主体性を持って取り組んでいくためのベース作りを行う狙いもあります。国民の多くが移民により構成され、建国からもまだ日が浅いシンガポールにおいて、地域(国)への帰属意識を醸成する1つの媒体として、コミュニティセンターは重要な役割を果たしています。
日本同様、急速な少子高齢化が進むシンガポールでは、交通弱者に向けたオンデマンドバスの活用や、AIによる医療診断など、最新テクノロジーを活用した対策も進められていますが、国を構成するのが人である以上、人と人との支えあいが重要であるという認識は、シンガポールも日本も変わらないようです。
シンガポール事務所 所長補佐 中間