「シンガポールでは、あらゆるメディアでのジュースの広告が禁止されるようだ」2019年10月にそんなニュースを耳にして大変驚きました。
シンガポール政府は、砂糖含有量が多い飲料商品(以下、甘味飲料)の広告禁止とパッケージへの「不健康」表示の義務付けの方針を表明しました(広告規制および表示義務の砂糖含有量の程度は、それぞれ異なる)。この甘味飲料への規制については、かねてより議論されており、2019年1月に意見公募が締め切られたところでした。シンガポール政府は、糖尿病対策の一環として甘味飲料の摂取を規制する方法について、(1)糖分・栄養情報のラベルの義務化、(2)広告規制の強化、(3)飲料メーカー、輸入業者への物品税(砂糖税)課税、(4)糖分の高いパッケージ甘味飲料の全面禁止、の4案に対する意見を募集していました。今回の発表は、意見公募したうちの(1)と(2)を採用したかたちです。
具体的な制度導入のタイミングや違反した場合の罰則の規定については、2020年1月以降制度設計する予定であり、甘味飲料の全面禁止や課税の可能性についても、引き続き検討していくようです。
甘味飲料への課税は、日本ではあまり馴染みはありませんが、クレアシンガポール事務所で所管する12カ国のうち6カ国(タイ、フィリピン、ブルネイ、マレーシア、インド、スリランカ )は既に導入済み(いずれも2017~2019年にかけて施行)で、インドネシアとベトナムでも現在検討されているといいます。アジア諸国では経済成長と所得増加により、甘味飲料の消費が拡大を続けており、それにともなって生活習慣病を招く肥満人口が増えています。こうした背景から、医療費増加につながる生活習慣病のリスクを低減するため、アジア諸国は近年次々と甘味飲料への課税に踏み切っているようです。
例えば、マレーシアの1人当たり年間砂糖消費量は56kgで、日本の1人あたり消費量16kgの3倍以上もの砂糖を1年間に消費しています。日本の1人あたり消費量は、世界平均の22kgよりもずっと少ないですが、同じく世界平均を下回るインドでも砂糖課税が導入されたことを考えると、日本でも砂糖への課税が検討される可能性も否定できません。もしかしたら、税金が高いからジュースを飲むのを控える、なんていう日も訪れるかもしれませんね。
シンガポール事務所 所長補佐 佐藤