インドネシアの首都であるジャカルタは、ジャワ島北西部に位置し、その都市圏人口は約3,200万人を擁し、東京都市圏に次ぐ世界第2位を誇っています。近年の発達は目覚ましく、人口構成が若く、高層ビルの建設が相次ぐ市内は活気に溢れ、ASEANの事務局が置かれるなど東南アジア有数の世界都市になっています。
その発展とは裏腹に、都市の発展に伴う問題が深刻化しています。私も複数回出張した経験がありますが、交通渋滞はかなり深刻で、帰りの飛行機の便に乗り遅れないか毎回ハラハラさせられます。交通渋滞による経済損失は、年間100兆ルピア(約1兆円)にも達すると言われており、住民の生活や企業の経済活動にとって大きな問題となっています。また、大気汚染や水質汚濁も深刻で、住民の健康への影響が懸念されています。さらにジャカルタでは、海抜ゼロメートル地帯が広がっていることや、地盤沈下が進んでいることから洪水被害も多く、今後のさらなる発展に向けた大きな課題となっています。
そうした中で、2期目を迎えたインドネシアのジョコ大統領は、2019年8月に首都をジャカルタから東カリマンタン州に移転することを正式に決定し、2024年までの移転開始を目指して準備が進められています。首都移転に必要な資金は466兆ルピア(約4兆6,600億円)と見積もられており、うち19%を国費負担、残りは民間資金等で賄うこととしています。また、ソフトバンクグループの孫正義会長が首都移転計画を検討する審議会の委員に任命されるともに、スマートシティづくりなどの観点から新首都への投資を表明するなど、日系企業にとっても大きなビジネスチャンスとなっています。
ジョコ大統領は、2019年10月に行われた就任演説の中において、独立100周年にあたる2045年までに1人当たりGDPで3億2,000万ルピア(約320万円)を達成し、先進国入りすることを表明しています。新首都移転が今後どのような形で行われ、インドネシアのさらなる発展に結びつくのか、また、現在の首都ジャカルタは今後どのような役割を担っていくのか、今後の動向から目が離せません。
シンガポール事務所 所長補佐 打木