シンガポールはフルーツの宝庫で、市場やスーパーには、お隣のマレーシアをはじめ、タイやフィリピン、ベトナム、中国南部などの南国フルーツが旬を選ばず棚を彩ります。「人種のるつぼ」と言われるシンガポールですが、食べられているフルーツも同じくらい多種多様です。
シンガポーリアンの春の楽しみと言えば濃厚な甘みとすっきりとした酸味を併せ持つ「マンゴスチン」、初夏には中国産の「緑ライチ」やインド産のマンゴーなどで食卓が賑わいます。そして7月には見た目以上に個性的な芳香、独特な食感や味から「果物の王」と呼ばれる「ドリアン」、現在はドラゴンフルーツが旬を迎えています。食べ物の旬で季節の移ろいを感じるのは、日本も常夏の国も変わりません。
意外なフルーツとしては、6月に現地スーパーでリンゴのフェアを多く目にしました。リンゴは秋の果物なのになぜ、と手に取ると、なるほどオーストラリアやニュージーランドなど南半球産のリンゴでした。スーパーによっては日本産のリンゴも販売していますが、それぞれを比べてみると、まず大きさが全く違います。日本産のリンゴは、他国産のものに比べて大きさが1.5倍、いや2倍ほどあり、そして姿見も素晴らしいです。しかし、グラムあたりの単価は2倍以上です。購入者も日系や欧米系駐在員と思われる人がほとんどで、現地での認知度はまだまだのように見えます。
これはイチゴ、メロンなどの他の日本産フルーツにも言える特徴で、ブドウにいたっては8月に日本産(巨峰)が300g(1房)「18~20シンガポールドル(約1,450~1,600円)」で販売されているのに対し、北アフリカ産の種なしで丸ごと食べられるのものが、500g(1.5房相当)「3~4シンガポールドル(約240~320円)」で売られるなど、完全に別のカテゴリーの商品として扱われています。
シンガポールへのフルーツの輸出については、南半球や北米、アフリカからの安価なものが大量に流通していること、日本では「規格外」となりそうな小ぶりなものが通常の商品として成立していること、日本の旬や端境期といった概念が通用しないこと、といった状況を踏まえた販売戦略も考えられそうです。
シンガポール事務所 所長補佐 中村