シンガポールは人口約550万人の小さな都市国家ですが、民族構成は多様で、中華系、マレー系、インド系などの人々が共存しており、宗教も仏教、キリスト教、イスラム教、道教、ヒンドゥー教など様々です。今回は、多民族・多宗教国家であるシンガポールにおける、取り組みの一端をご紹介します。
(1)4つの公用語
シンガポールでは、3大民族である中華系、マレー系、インド系の融和を図るため、中国語、マレー語、タミル語、英語の4言語が公用語に設定されています。英語は、国際経済都市としての発展のためというビジネス的な効果と、国民の一体性を高めるための共通語としての効果を期待され設定されました。例えば、シンガポールの地下鉄(MRT)では、案内板や車内放送も4ヶ国語対応となっています。
(2)様々な宗教に基づいた祝日
多宗教国家でもあるシンガポールでは、特定の宗教が国教として指定されておらず、信仰の自由は憲法で保障されています。そのため、互いの宗教や生活観を尊重できるよう、信徒の多い宗教の祭日は祝日に設定されており、国民が各々の宗教の祭事に参加しやすくなっています。
(3)Racial Harmony dayの実施
シンガポール教育省は、民族融和意識を高めるため、7月21日を「Racial Harmony Day」と定めています。これは過去に2度発生した大きな民族対立を忘れないようにするためのもので、この日は民族融和の意識を高めるために各学校で様々な企画が催されます。具体的には、生徒たちが各民族衣装を着る、伝統舞踊や民族楽器の鑑賞・体験をする、民族料理の調理・試食をするなどの取り組みが行われて
います。
シンガポールでは、こうした取り組みを通じ、民族的・宗教的多様性を尊重し、異なる価値観を持つ人々同士の相互理解を促すことで、国民同士の調和を図っています。
シンガポール事務所 所長補佐 児玉