国土の狭いシンガポールにおいては、廃棄物処理を行う施設や場所等を確保することが課題の一つとして挙げられます。今回は、シンガポールの廃棄物処理事情について、ご紹介します。
シンガポールでは、高温多湿な気候で生ごみが腐りやすいといった事情から、家庭ごみ・事業所ごみ等、全てのごみは毎日収集されています。以前のごみ収集は、環境省(当時)が全て所管していましたが、1996年から民間委託を開始し、2001年9月から完全に政府が免許を与えた民間企業が業務を行っています。家庭ごみの費用に関しては、公益費として各住民から料金を徴収しています。
収集された廃棄物は、直接埋め立てするのではなく、焼却後に埋め立て処理しています。また、収集されたごみの9割を占める焼却可能なごみは、国内4か所の焼却場で焼却されます。これにより生じた焼却灰と、焼却不可能な残り1割の廃棄物が埋め立て処理されています。
現在4つある焼却場のうち2つは、焼却により発生する熱エネルギーを再利用できる設備を備えており、国全体のエネルギーの2~3%を賄っています。廃棄物はTuas Marine Transfer Stationから、最終埋立処分場であるセマカウ島まで船で輸送されます。毎年約20万トンの固形(無機)廃棄物と、全ての焼却灰をセマカウ島に輸送していることにより、セマカウ島の使用可能年数は2035年までとなる予定です。
この現状を踏まえ、国家環境庁は2019年に「廃棄物ゼロへのマスタープラン」を発表しました。食品廃棄物、電気・電子廃棄物、プラスチックを含む包装廃棄物の3点をメインに削減する方針です。2030年までに廃棄物処分場(セマカウ処分場)に送る廃棄物を30%削減し、2035年以降も埋立地としてセマカウ島を利用できるようにするということを主な目標に掲げています。また、ごみ減量やリサイクル促進の取り組みを行う企業や団体を助成する3Rファンドを実施しています。
シンガポールでは、こうした取り組みを通じ、限られた土地を有効活用しながら、国民の環境意識を高める啓発活動を行っています。
シンガポール事務所 所長補佐 新原
出典
〇国家環境庁
・Waste Management(https://www.nea.gov.sg/our-services/waste-management/overview)
・Refuse Disposal Facility(https://www.nea.gov.sg/our-services/waste-management/waste-management-infrastructure/refuse-disposal-facility)
・Integrated Waste Management Facility(https://www.nea.gov.sg/our-services/waste-management/waste-management-infrastructure/integrated-waste-management-facility)
・Zero Waste Masterplan(https://www.towardszerowaste.gov.sg/zero-waste-masterplan/)
・3R Fund(https://www.nea.gov.sg/programmes-grants/grants-and-awards/3r-fund)