インドネシアでは、首都を2045年までにジャカルタから移転する計画が始動しています。移転先の新首都は、カリマンタン島の東カリマンタン州で名称は「ヌサンタラ」となります。現在はホテルや病院の建設が始まっています。
首都移転の必要性については以下の3つが挙げられています。
(1)インドネシアの今後の持続可能な開発を遂行するため
「インドネシア2045年ビジョン(Visi Indonesia 2045)」では、インドネシアは2036年までに中所得国から脱出し、2045 年を目処に世界で5番目の経済大国として躍進することを見込んでいます。2045年までに経済大国入りを果たすために、人的資源の育成、インフラ整備、法的整備、行政改革等の経済改革を推進する必要があり、首都移転はこれらを牽引すると見なされています。
(2)地域の経済格差是正のため
これまでにジャカルタは多岐にわたる分野のハブ(行政、政治、産業、投資、技術、文化など)として機能してきました。しかし、ジャカルタの面積はインドネシア全土の0.003%(664.01km2)にも関わらず、ジャカルタの在住人口(1,056万人)は全人口の3.9%を占めています(2020年データ)。このように、ジャカルタに開発が集中しており、他の地域との経済格差が生じてしまっているため、インドネシア政府は新首都を移転させることで、新たな経済中心地を構築する予定です。
(3)ジャカルタが各種の課題を抱えているため
ジャカルタ市内の人口密度は16,704人/km2であり、全国平均値の141人/km2を大幅に超えています。また、ジャカルタ市内の交通渋滞問題は非常に深刻で、2019年にジャカルタの交通渋滞レベルは世界10 位となっています。さらに、ジャカルタの環境問題も深刻化しており、洪水や地盤沈下などの問題も絶えず発生しているという状況があるためです。
以上の理由から首都移転が必要という判断となり、その計画が進んでおり、新首都「ヌサンタラ」と現首都「ジャカルタ」の今後が注目されます。
当事務所では、上記のような政策や地方自治制度の内容をまとめた「各国の地方自治」をホームページで公開しております。所管国の制度概要の確認に是非ご活用ください。
クレアシンガポール事務所 各国の地方自治:
https://www.clair.org.sg/j/localautonomyofeachcountry/thelocalautonomyofeachcountry/
シンガポール事務所 所長補佐 久原
※1:JETROビジネス短信「新首都法改正案が可決、開発継続を保証」
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/10/ac8116f8007470d2.html
※2:JETROビジネス短信「新首都ヌサンタラに関する法律施行」
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/02/610cbd0fd40d1432.html
※3:インドネシア財務省HP
https://www.djkn.kemenkeu.go.id/kanwil-kalbar/baca-artikel/14671/Urgensi-Pemindahan-Ibu-Kota-Negara.html