クレア・シンガポール事務所では、2013年9月13日、クレア・東京本部においてシンガポール政府との連携による新たな地域産業振興策の可能性を探るための「クレア海外経済セミナー」を開催しました。
近年、多くの日本の地方自治体で、海外からの企業誘致、地元企業の海外展開支援に取り組んでいます。一方、外資導入を国策の根幹に据えているシンガポールの経済振興関連機関は、日本の中小企業が保有する高度技術やサービスに注目しており、そのような企業との連携、投資の可能性を模索しています。しかし、日本の企業について情報が不足しており、なかなかビジネスの成立まで結びつかないのが現状です。双方の海外展開・誘致がスムーズに進む方策を探るため、今回のセミナーを全国の自治体関係者を対象に実施しました。本セミナーには日本側からだけではなく、シンガポール政府から、発表者兼パネリストとして国際企業庁リー・ホイリョン東京事務所長をお招きしました。
セミナー前半は対日投資やシンガポールの状況について各発表者より説明がありました。シンガポールは国土が狭く市場も小さいため、シンガポールの企業は常に積極的に海外への事業展開を行っています。国別の対日投資残高でも米国、オランダ、フランス、ケイマン諸島に次いで第5位となっています(2011年末)。
また、貿易立国であるシンガポールでは、世界から製品や技術を集め、現地で統合してから海外に発信するというビジネスモデルが確立されており、海外の企業を誘致・投資する体制が整っています。そして、シンガポールは東南アジアへ発信するトレンドの中心地でもあります。そのような強みを持つシンガポール政府のリー所長から「日本には隠れたビジネス展開の商材がたくさんあると感じている。シンガポール企業と組んだ更なる事業展開が見込めるのではないか。特に環境、再生可能エネルギー、観光、美容、ヘルスケア、介護などの分野に期待している。」との提案がありました。
後半のパネルディスカッションでは、地元企業の海外進出を支援する上で自治体に必要なことは何かについて討論を行いました。パネリストからは「自治体は、まず、地元企業にどんな強みがあるのか把握すること。企業側の『やる気』の有無の見極めも不可欠。その上で、行政としてどこまで支援するか、求める成果は何かを明確にすることが必要。」といった意見が出ました。
シンガポールで「ゆず」製品を展開している高知県の百田主査からは、「企業の海外進出を支援するからには自治体もビジネスのノウハウをもって臨むことが必要。販路開拓後はいかにその商品を海外で持続して出していけるか。その体制が重要である」との発言があり、自治体は進出後の支援も視野に入れて戦略を立てる必要があると感じました。
一方、海外から日本を投資先として見る場合、視点はがらりと変わります。リー所長からは「シンガポールが海外進出を検討する際は、まず、『世界のどこに進出すれば成功するか』を他の国・地域と比較の上考える。そのため、日本にどういうビジネスチャンスがあり、こうすれば成功するかも、という情報が耳に入らないと進出先の検討候補にすら挙がらない。」という厳しい意見がありました。セミナー終了後は自治体の参加者と積極的な名刺交換の場があったので今後ビジネス展開につながることを期待します。
アベノミクスの効果、東京五輪の開催など、今後海外における日本への関心はさらに高まっていくことが考えられます。今回のセミナーでは、「ビジネスチャンスを成功へ導くためには、迅速な意思決定、観光、産業政策と一体となった外資誘致活動が必要」などといった意見もありました。今回のセミナーの全てについては短い紙面ではお伝えしきれませんでしたが、今後「自治体国際化フォーラム」にてさらに詳しくお伝えする予定です。
今回は初の試みでしたが、熱心な自治体の参加者からは「海外展開の具体的な事例がさらに聞きたい」という声も多く、手応えを感じました。今後、当事務所としても自治体による経済活動支援のアイディアを積極的に発信していきたいと思います。
(松田所長補佐 東京都派遣)