クレアシンガポール事務所では、2018年11月2日(金)から4日(日)まで、タイ・バンコクの中心街にあるショッピングセンター「サイアム・パラゴン」にて開催された訪日旅行フェア「Visit Japan FIT Fair 2018」の様子を取材してきましたのでその様子をお伝えします。
この旅行フェアは、JNTOが海外で開催する訪日旅行フェアとしては最大規模のイベントであり、官民一体となって秋冬のピークシーズンの需要を促進するために開催されています。
JNTOによると、2017年にタイからの訪日旅行客は前年比で9.5%増加しており、過去最高の987,211人を記録しました。3年前(2014年)からの比較で考えると年間で30万人以上も増加しており、訪日旅行への関心が非常に高まっています。
タイからの訪日旅客数の推移(出典:JNTOウェブサイト)
年次 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 |
訪日旅客数 | 657,570人 | 796,731人 | 901,525人 | 987,211人 |
前年比増加率 | +45.0% | +21.2% | +13.2% | +9.5% |
今回の全体テーマは日本の冬をイメージしたものとなっており、ステージ付近にも雪を施した装飾が目立ち、来場者の本物の雪を見たいという気持ちを喚起していました。ステージではフェア期間中を通して、各出展者が様々なパフォーマンスを行うなど、来場者を飽きさせない工夫がなされていました。
JNTOブースでは全国各地の観光パンフレットが並べてあるほか、自分が行きたい地域への行程について具体的に相談できるコーナーがあり、常に順番を待つ列が絶えないほどの大盛況でした。多くの来場者が具体的に日本に行く計画を持っているようでしたが、中には既に会場内のブースで航空券を購入した後に相談コーナーを訪れ、どういうルートを巡るのが一番おすすめかという情報を求めている人もいました。
今回の旅行フェアにも多くの自治体関係者がブースを出展していましたが、タイの旅行者はSNS映えするような自然や、綺麗な花を好むということが浸透してきたようで、どこのブースもタイ旅行者の好みを意識した、写真映えする観光スポットを推したパンフレットを前面に出したり、ブースで写真が撮れる場所を設けるなど工夫をしていました。その中でも特に目立ったのは広域連携協議会等として、単独の自治体ではなく複数の自治体・民間事業者がタッグを組んだ形でのブース出展でした。広域連携協議会の構成員として出展されていた民間企業の方からは、観光客は「●●県」や「〇〇市」だから来るのではなく、そこに面白いコンテンツがあるから来る、行政の境にこだわらず、少しでも多くの魅力的な観光素材を一緒にPRする方が効果的だという意見が多く聞かれました。広域地域でPRすることで、旅行者に広い地域での周遊をお勧めでき、地域での滞在日数が伸びることが期待できるので、今後こうした形でのブース出展が増えていくことも予想されます。
タイ市場では、訪日旅行のリピーターの増加と個人旅行化が進み、旅行先や旅行方法も多様化しています。FITフェアが個人旅行者をターゲットにしていることもあり、今回からFITフェアにも出展するようになったという自治体も複数いらっしゃいました。また、リピーター対策として、公共交通機関では行きにくい場所でも、よりディープな魅力を体感してもらうため、多くの自治体がレンタカーの利用を勧めていることも印象的でした。また、色々なブースを取材する中で、ただ観光地を見て回るだけなのはタイの旅行者には耐えられない、体験がないと嫌だという傾向が強いことを多くの方が仰っていました。
タイではFacebook等のSNSが盛んだということで、各ブース、そうしたSNSと連携したキャンペーンを行っているところが目立ちました。JNTOブースでタイでのメディアを活用したPRについて話をお聞きしたところ、「タイでは誰もが知っているような有名人を使った広告キャンペーンは広く消費者に訴求する爆発力がある、一方SNS等を利用して、特定の領域(食・旅・趣味など)で強いファンを持っているインフルエンサー達をPRに使うことで、より深く魅力を届けることが出来る。ターゲットによって両方を使い分けていくことが大切」と仰っていました。
今回取材した多くのブースでは、リピーターが好むような観光スポットへアクセスするためには、まだまだ公共交通機関が整備されていないという課題を抱えていることでした。レンタカーを使った周遊プランをPRしているものの、国際免許を持たない観光客も多く、二次交通の整備を課題として認識している自治体が多くいらっしゃいました。バンコク都心部では車を持つ必要がないからと、免許を持っていない若者も多くいるそうです。
インターネットの発達、個人の嗜好の多様化等を背景に、個人旅行・リピーターの増加という傾向はこれからも続いていくことが予想されます。自治体には、SNS等の情報発信を充実させていくことと、二次交通等の受地整備も充実させていくことを両輪としながら、リピーターに選んでもらえる観光地づくりを進めていくことが期待されています。
概 要 | JNTOが主催する訪日旅行フェア |
開催期間 | 2018年11月2日(金)~4日(日) 10:00~20:00 |
開催場所 | サイアム・パラゴン |
対 象 | 一般消費者 |
入場料 | 無料 |
来場者数 | 55,554名(主催者発表) |
自治体関係
出展者(一部) |
北海道、宮城県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、千葉県、新潟県、福井県、静岡県、三重県、兵庫県、和歌山県、鳥取県、山口県、佐賀県、長崎県、大分県、沖縄県、関東観光広域連携事業推進協議会、九州観光推進機構 など |