クレア・シンガポール事務所では、全国市町村国際文化研修所等との共催で、2014年11月5日(水)から11月15日(土)まで、マレーシアへの視察ミッション「地域間交流促進プログラム」を実施しました。
この事業は、日本の地方自治体職員等を海外に派遣し、政府機関・企業等の訪問や市民との交流などを通じて、両国間の政治経済・文化交流等における現状と課題の理解を図り、今後の地域間交流の契機とすることなどを目的として、2007年から開催しています。
今年度は、2015年の経済共同体誕生を控えたASEAN諸国の中でも、一人当たりGDPが1万ドルを超え、順調な経済成長を背景にマーケットとしての魅力も注目されるマレーシアを訪問しました。今般、本プログラムの報告書を発行するにあたり、以下に概要をご紹介します。
今回の訪問では、まず、クアラルンプールにおいて、日本大使館や本協会シンガポール事務所より、最近の政治や経済、日本の地域産品の販路拡大の可能性や訪日旅行の状況に係る説明を受けた後、伊勢丹、イオン、味の素工場など現地日系企業の視察、イスラム振興局、ハラール産業開発公社やムスリム旅行客を対象とする現地旅行会社からイスラム教やハラール、ムスリム客の訪日旅行誘客に係る説明を受けました。
国の機関が集中するプトラジャヤでは、住宅地方自治省において日本とは異なる地方行政制度について、観光文化省でマレーシアの観光政策全般についてブリーフィングを受けました。
クアラルンプール市では都市開発についての説明を受けた後、交通管理センターを視察し、日本留学経験者の同窓会組織や現地の大学で日本語を学ぶ学生との交流も行いました。
その後ジョホールバル市で地方都市における行政システムについて説明を受け、窓口業務などを視察したほか、大規模な都市開発で注目を浴びるイスカンダル開発地域について、イスカンダル開発公社からのブリーフィング後、開発地域の視察を行いました。イスカンダル開発地域内にあるタンジュン・ペラパス港へも訪問し、港内のフリーゾーンで活躍する日通も視察しました。
2020年に先進国入りを目指すマレーシアでは、整備された新行政首都であるプトラジャヤや、イスカンダル開発地域に代表されるように、政府主導のもと開発が進んでいる様子を見ることができました。また、観光文化省では外国人に長期滞在を提供する「マレーシア・マイ・セカンド・ホーム」事業、イスラム圏からの旅行者を取り込むための「イスラム・ツーリズム」事業、2014年を観光年(Visit Malaysia Year)と定めた各種イベントの展開等、観光客の誘致に積極的に取り組んでいる状況を聞くことができ、観光政策においても政府が戦略的に展開している様子がわかりました。
順調な経済成長を遂げているマレーシアはマーケットとしての魅力も高まっており、伊勢丹・イオンなど日系の百貨店・大型スーパーは地元の人にも馴染みのあるものとなっていて、日本の地域産品の輸出拡大の可能性を強く感じました。日本留学経験者や日本語学科の学生との交流では、マレーシアの人の日本に対する関心の高さや、古くは東方政策に代表される日馬交流の歴史・重要性を再認識しました。研修全体を通じて、マレーシアの多民族・多文化が共生している姿に触れることができ、イスラム振興局・ハラール産業開発公社、現地ムスリム専門旅行会社の訪問からは、日本の地域産品の輸出や訪日旅行客誘客に際しては、イスラム教やハラールについて正しい知識を持ち、情報を正確に発信することの大切さについて考えさせられました。マレーシアの地方自治を管轄する国の組織である住宅地方自治省地方自治局、地方行政を担うクアラルンプール・ジョホールバル両市を訪れることができ、連邦政府の影響力の大きさ等日本の地方自治との違いに気づかされました。また、都市開発が進みインフラが整備される中、交通渋滞やゴミ処理等環境問題など都市が発展する段階特有の課題に直面している様子もうかがうことができました。東南アジア第3位の港で急成長を遂げているタンジュン・ペラパス港ではスケールの大きさに圧倒され、また、現地で早くからハラール市場に対応してきた味の素や、タンジュン・ペラパス港のフリーゾーン内に物流の拠点を置く日通など日系企業が活躍する姿を見ることもできました。
現地ではクアラルンプール・ジョホールバルの両都市、国と地方政府、日系機関・日系企業や現地機関など、様々な部署を訪問し、たくさんの方々と知り合うことができ、大変有意義なプログラムだったと感じております。この研修で得た知識やネットワークが、今後、自治体の海外事業展開の契機になればと思います。
(松田所長補佐 東京都派遣)