着実な成長を続けて世界の注目を集めるインドネシア。中でもインドネシア第2の都市で多くの日系企業が事業所を構えるスラバヤ市は、「クリーン&グリーンシティ」をスローガンに掲げて各種の取組を進めており、インドネシア国内外の注目を集める先進的な地域です。
他方、水害対策においては課題を抱えており、雨期には降水量の急激な増加により、毎年のように洪水が発生しています。
この度、当事務所が実施する専門家派遣事業において、2014年11月24日(月)から27日(木)まで、スラバヤ市に福岡県の職員が水道管理のスペシャリストとして派遣されました。
初日、スラバヤ市社会保障局長よりスラバヤ市の水害管理の現状説明がありました。スラバヤ市は水害を防ぐため各種取り組みを進めており、例えば堤防の建設、河川の堆積物を汲み上げての排水道の詰まり除去、側溝の拡幅等の対策を講じていますが、雨期には毎年のように河川が氾濫しており、効果的な対策に迫られているとの説明がありました。
市内を流れるソロ川やラモン川が氾濫して濁流が押し寄せた2011年の大規模洪水は、一部で高さ約1.5メートルまで冠水し、市民の日常生活や経済活動に影響を与えたという事でした。
こうした現状を踏まえ、
①効果的な洪水対策
②スラバヤ市の状況に適した水害時の応急体制(各関係機関の役割、連絡体制、出動体制、協働体制等)
③水害発生時の早期警報システムの確立
④水害時の関係者間(省庁、自治体、市民)の役割や協働体制の仕組みづくり
について指導してほしいとの要望がありました。スラバヤ市としてはこれらの問題を解決し、水害管理への取り組みを向上させたいとのことでした。
現状説明の後、水害が頻繁に発生している現場に移動し、建設中の堤防等を視察しました。専門家はスラバヤ市の担当者の説明を受け、具体的な解決に向けた意見交換を行いました。
2日目の講義では、洪水対策として、専門家から河川の拡幅や掘削等の改修方法、貯水池を活用した水量管理方法、森林保全による水害予防について説明されました。また、実技指導として、スラバヤ市の職員が河川の氾濫危険性の高い場所を正確に把握するために、地域防災マップの作成を行いました。約30名の市職員が実際に5つのグループに分かれて、スラバヤ市内の水害危険箇所を特定し、専門家が用意したスラバヤ市の地図上に落とし込む作業が行われました。
3日目の講義では、水害発生時に重要となる応急体制について講義が行われました。福岡県内の先進事例として大野城市の取組事例を参考に、応急体制の構築方法や、平常時から水害に備えた取組を進める事の重要性について説明が行われました。また、水害発生時の被害予防策として、早期警報システムについても講義され、参加者が実際に携帯電話を使いながら、福岡県の河川防災情報にアスセスして確認しました。
最終日となる4日目の講義では住民参加の災害対策事例について講義が行われました。この中で、災害時の取組として重要となる①自助、②公助、③共助について紹介した上で、緊急時に行政の救助支援が間に合わない事態を想定した近隣住民同士の相互扶助の重要性や仕組みづくりについて、阪神大震災等の事例を紹介しながら説明が行われました。講義に参加した市職員は現場で災害対応にあたる方々が多い事もあり、興味深く専門家の説明を聞いていました。
最後の講義となる総括では3日間の講義内容を再確認するとともに、PLAN、DO、SEE、CHECKのいわゆるPDCAサイクルを提示し、水害対策を進める上で、日頃から継続的に検証作業を続ける重要性について説明されました。
「日頃の備えが水害被害を防ぐ」、「PDCAサイクルによる水害対策の継続的な見直し作業が効果的な災害対策につながる。」これは専門家による講義最終日の総括の言葉です。日本では聞き慣れたフレーズかも知れませんが、スラバヤ市においても、水害を防ぐためにはこれらの取組は非常に大切です。本事業によって、スラバヤ市の水害対策が効果をあげることを期待して、今回の専門家の講義が終了しました。
【自治体国際協力専門家派遣事業に関するお問い合わせ先】
一般財団法人自治体国際化協会交流支援部経済交流課
電話:03-5213-1726
(仲田所長補佐 堺市派遣)