マレーシアのクアラルンプール市は東南アジア有数の大都市ですが、発展の陰に低所得者層も依然多く、同市にとってもその対応は喫緊の課題となっています。今回、クアラルンプール市からの依頼を受け、2016年11月20日(月)から25日(金)にかけてクアラルンプール市住宅管理・社会開発局に千葉県千葉市稲毛保健福祉センターから社会福祉の専門家として二階紀行主査を派遣し、「自治体国際協力専門家派遣事業」を実施しました
住宅管理社会開発局は、低所得者向けに市営住宅(約2万7千戸)を整備し、安価でに提供しています。また、それに付随した生活環境及び、協力的なコミュニティづくりを目指しています。現在、クアラルンプール市営住宅では落書きやエレベーターの破損、ケーブルの盗難などの行為が多く補修費の高騰が問題になっています。また、家賃の滞納も深刻になっているため、住民の意識を変え、自立につなげていく方法について試行錯誤を重ねています。
同市はこのような問題に対し学校やコミュニティでのイベントを通じた啓発活動や、市の管理チームの定期的な巡回、長期滞納者については法的な罰則(水道供給を止めるなど)の適用、自立支援としてワークショップや職業訓練コースの提供などを行っています。
しかし、市によるとこのような様々な対策をしているにも関わらず、低所得者の自立に向かう気持ちが薄く、なかなか政策の効果上がらないと感じているとのことでした。そのため、今回、住民の意識を高め、政策の効果をあげていくことを目的に、今回専門家の派遣を依頼しました。
まず、専門家はクアラルンプール市の貧困対策の現状を知るため以下のような施設を視察しました。
①コミュニティセンター
②市営住宅
③ホームレスセンター、ホームレス向けの給食施設
また、市の担当者に向けて、「日本の生活保護制度」「千葉市の自立支援事業」という2つのテーマで講義を実施しました。参加者からは日本の制度についてマレーシアとの違いや、日本の貧困者の自立支援の成功事例などについて、熱心に質問が出ました。専門家からは、低所得者向けに公営住宅を新築するではなく、低所得者向けの家賃補助を導入すべきなど、クアラルンプール市の事情に基づいた様々なアドバイスを行いました。
また、職員との意見交換の中では、住民のニーズに合わせたワークショップの実施の重要性などについて、千葉市の事例などを踏まえたやりとりが行われました。クアラルンプール市の職員からは専門家の助言を今後の業務に生かしていきたいと前向きな回答がありました。
クアラルンプール市の課題解決に向けた様々な取り組みが、専門家のアドバイスにより、一層効率的かつ効果的に進むことが期待されます。
このように、自治体国際協力専門家派遣事業は、日本の自治体と海外の自治体の友好協力関係を強化するため、日本の自治体職員を現地に派遣し、講義や実技を通して日本の自治体が持つノウハウを伝える事業です。詳細につきましてはクレアのホームページをぜひご覧ください。
(http://www.clair.or.jp/j/cooperation/special/)
(中澤所長補佐 群馬県派遣)