クレアが実施している自治体国際協力専門家派遣事業は、海外の自治体などの行政資質と技術力の向上、人材の育成に資するとともに、日本の地方自治体と海外の地方自治体との友好協力関係を強化するため、日本の自治体職員を現地に派遣し、講義や実技を通して日本の地方自治体が持つ行政のノウハウを伝える事業です。
今回は2017年11月28日(火)から12月5日(火)にかけて、農業に関する専門家として山梨県職員をインドネシアのジョグジャカルタ特別州に派遣しました。
ジョグジャカルタ特別州は、ジャワ島中部南岸に位置する州で人口は約360万人、ともに世界文化遺産に登録されているボロブドゥール寺院遺跡群、プランバナン寺院群を目指して世界中から多くの観光客が訪れる都市です。山梨県はこのジョグジャカルタ特別州と2016年11月に「友好協力に係る覚書」を締結し、その後の5年間で文化、農業、教育、観光等の分野で友好協力関係を促進することとしています。今回は、この覚書に基づく農業分野の交流の第一弾として、同特別州からの要望に応じて山梨県から専門家を派遣したものです。
課題は大きく2つありました。1つは生産性の向上、もう1つは観光農業施設「ジョグジャ・アグロ・テクノパーク」の整備です。専門家は関連施設や生産現場の視察を行いながら、ジョグジャカルタ特別州職員や農家からの質問に丁寧に回答していました。
具体的には、ジョグジャカルタ特別州は土地に適した品種や栽培技術(特に有機農業における病気・害虫の予防方法、肥料の調整方法など)の助言を専門家に望んでいました。専門家は、品種に関しては似た気候の土地でうまくいっている品種を試行錯誤するほかないと伝えたほか、栽培技術に関しては雨よけや防虫ネット等の設置を勧めたり、農薬や肥料の使い分け方を説明したりしました。また、人材育成により地域全体の底上げを図る視点が欠けていることを指摘し、先進的な取組みを行っている農家を視察したり、農家がきちんとした栽培技術を学べる場を提供したりするようアドバイスしました。
ジョグジャカルタ特別州はムラピ山の麓の19haの土地に観光農業施設「ジョグジャ・アグロ・テクノパーク」を整備する予定で、2018年着工、2019年完成を目指しています。しかし、具体的な計画は白紙に近い状況でした。専門家は、低標高と水源確保を課題として挙げ、整備予定地での栽培に適した果物、野菜等の品種を早急に選定するよう伝えたほか、魅力的な観光地とするための企画づくりや管理運営方法を含め、一度山梨県の関連施設を視察するよう勧めました。また、今後の発展のために、栽培技術の研究機能を持たせることも提案しました。
ジョグジャカルタ特別州が重点的に対策を進めていく生産物の絞り込み(果物:ブドウ、イチゴなど、花:キクなど、野菜:トウガラシ、インゲン、アブラナ科野菜など)もでき、山梨県の今後の協力の方向性も定まりました。また、ジョグジャカルタ特別州は、専門家との意見交換を経て、栽培技術はもとより、収穫後の品質管理、生産物の販売方法、人材育成方法などについても山梨県とは知識・技術・経験の点において大きな差があることを痛感し、今後の交流を通じて山梨県からもっと学んでいかなければならないと認識していました。
今回の専門家の派遣を契機に両自治体の交流がさらに加速することを期待しています。
自治体国際協力専門家派遣事業は、国際交流、国際協力のみならず海外への自治体PRにもつながります。自治体の皆さまにおかれましては、ぜひ同事業をご活用ください。
(参考URL:http://www.clair.or.jp/j/cooperation/special/index.html)
(上玉利所長補佐 鹿児島市派遣)