ヒマラヤに広がる豊橋の取組 ~インドガントク市で専門家派遣事業を実施~

2019年1月20日から27日までにかけて、愛知県豊橋市廃棄物対策課の職員が、インドガントク市で廃棄物管理に関する講義及び現場指導を行いました。これは(一財)自治体国際化協会が行う専門家派遣事業の一環として行われたものです。

ガントク市はインド北部シッキム州の州都で、人口は10万人。周囲をネパール、チベット、ブータン、バングラデッシュに囲まれた山岳地帯で、世界最高峰のエベレストに匹敵するカンチェンジュンガが立地するヒマラヤのベースキャンプとして栄えた街です。近年では人口の20倍に上る200万人ほどの観光客が一年間で訪れるようになり、旅行者が持参するペットボトルなどのプラスチック製廃棄物の処理が課題となっていました。

講義は4日間にかけてガントク市役所の会議室で行われ、市長・議長をはじめ、市・州政府職員やNGO関係者ら20名強が連日参加しました。講義に参加したNGO「Zero Waste Himalaya」のメンバーは最終日に参加者を代表し「日本の廃棄物処理の根幹が分別にあることを理解した。我々も豊橋の取組を見習わなければならない」と感想を述べました。また同席した州政府職員は「530運動、指定ゴミ袋の導入、ごみステーションの設置など大変参考になった。身近に取り組めることから始めていきたい」と発言し、豊橋市の取組が関係者らの心を打ちました。

講義の合間に行われた現場視察では、ガントク市で行われているオープンダンピングの実態が明らかとなりました。中間処理(焼却)施設を有しておらず廃棄物がそのままの形で投棄されているダンプサイトでは、覆土がされていないことが原因で終始強烈な匂いが立ち込めていました。また不法に侵入し廃棄物を投棄していくトラックや、無造作に設置されたごみの分別場など、最終処分場としてのシステムが整っていないことが原因で、残り17年使える予定の処分場も、実際は5年余りしか持たないという実情が明らかとなりました。日本ではごみの減量化に使われている一般的な焼却施設も、インドの文脈では、環境への負荷が大きいことや設置にかかるコストの面から、導入に対して腰が重いのが現状です。専門家はごみの定量的な分析を踏まえた長期的なごみ排出抑制計画(マスタープラン)策定の重要性を訴えることで、市長をはじめ参加者から共感を得ました。

廃棄物処理はインドが抱える長年の課題であり、解決に向けては、長期的な計画と行政・NGO・住民を含めた地域全体での取組が欠かせません。廃棄物処理に課題を抱えるヒマラヤの街が、専門家からの提言を受け、今後どのような廃棄物処理行政を行っていくのか、これからの取組に注目したいと思います。

今回専門家を派遣した豊橋市は日本で530運動(=ごみ拾い運動)を初めて提唱した自治体で、一昨年にもインド・ジャールカンド州ポルパンダル市に専門家を派遣しています。また、上下水道の分野でもインドネシア・メダン市及びソロク市へ技術協力を行うなど、国際協力の分野で日本をリードしています。今回の事業を通じ、同市はまた一つ途上国に対し貢献し、その存在感を世界に向けて大きくアピールしました。

■派遣概要

派遣先国・自治体 インド シッキム州 ガントク市
派遣期間 2019年1月20日~1月27日【8日間】
※講義は1月22日~1月25日まで
専門家 豊橋市(愛知県)環境部 廃棄物対策課職員
指導内容 廃棄物管理
講義内容 ①   日本の廃棄物処理システム
②   豊橋市における廃棄物処理システム
③   プラスチック製廃棄物の処理方法
現地指導 ①   マータム最終処分場
②   ラル市場コンポスト
③   チルドレンズパーク(旧廃棄物不法投棄場)
専門家派遣事業について http://www.clair.or.jp/j/cooperation/special/index.html

 

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