2017年1月、私立富士見丘中学高等学校生(高校2年生中心)が海外フィールドワークの一環として、シンガポールの教育政策等を学ぶために「教育省ヘリテージセンター(MOE Heritage Centre)」を訪問しました。クレアシンガポール事務所は、シンガポール教育省との連携強化の観点から、同行の活動を支援しましたので、その概要を報告します。
教育省ヘリテージセンターは、シンガポールの教育について、19世紀初頭から現在に至るまでの歴史、現在の政策、今後の展望を学習することができる施設です。2011年に旧校舎を利用して開設され、貴重な教育資料も展示されています。施設は毎週金曜日に一般向けに開放され無料で見学することができます。また、金曜日以外でも個別の要望に応じたガイドツアー(有料、事前予約必要)であれば見学可能で、シンガポールの教育に精通した職員の案内により、シンガポールの教育について説明を受けることができます。今回の訪問では、シンガポールの高校で校長を歴任された教員経験者の案内により、シンガポールの教育について説明を受けました。
シンガポールでは初等教育の1年生から授業が英語で行われています。また、シンガポールは華人系、マレー系、インド系及びその他の複数民族で構成される多民族国家であることから、それぞれの民族の文化的な背景やアイデンティティを尊重するため、英語と同時にそれぞれの母語も学んでいます。英語と母語の2言語教育は、①国際ビジネス活動においてビジネス共通語であることに加え、異なる民族間での意思疎通を図るための共通語として英語の習得が必要であったこと、②国民が社会や家族の調和を重視するアジア的価値観を学び、アジア人としてのアイデンティティを保つために各民族母語の習得が必要であったため、1966年から実施されているものです。また、英語教育の目的を先進国の資本や科学技術を取り入れて経済発展を図るとともに国際競争力の優位性を確保するためであることを明確にしている点がシンガポールならではの特徴といえます。
訪問した生徒たちは、日本語通訳を介さずに英語で直に説明を受けるとともに、シンガポールの教育に関する歴史や政策について積極的に英語で質問し、理解を深めていました。特に、シンガポールが英語教育を経済成長のために不可欠なものとして位置づけた戦略性に深い関心を持っている印象でした。教員経験者による現場の知見を通じて、生徒たちはシンガポールの教育に関する歴史も踏まえながら学習でき、国際的な素養を養う貴重な経験となったようです。
頑張って英語で質問する生徒の姿を頼もしく感じるとともに、今回の訪問で得られた知見が今後の学習に存分に活かされ、国際社会において活躍していく人材へと成長することを期待しています。