シンガポールの科学技術政策の中で特徴的なものが、バイオメディカル分野の研究開発拠点となっているバイオポリスです。教育省やシンガポール国立大学の近くにあるこの地には、国内外の公的研究機関や民間企業などが多数入っています。この度、兵庫県立大学が海外における共同研究についての可能性を調査することを目的に来星し、バイオポリス内にある2つの日本機関で日本の大学との連携状況などについてヒアリングしましたので、ご報告いたします。
早稲田バイオサイエンスシンガポール研究所は2004年に民間企業と共同でバイオポリス内に研究所を開設した後、2009年以降は単独で研究所を運営しています。同研究所は早稲田大学が出資している研究所であり同大学からの研究者などが日々研究を行うほか、シンガポール国内または日本の関連のある大学からのインターンシップを受入れています。
また、バイオポリス内には「共同研究をしなければいけない」という気持ちの研究者達が集まっているため、コーヒーを飲みながら雑談したり、自分の研究所の外で新たに知り合ったりなど、ふとしたきっかけから共同研究が始まることもあり、研究所の集積地であるバイオポリスの研究者にとっての利点の一つと言えます。また、兵庫県にあるスーパーコンピューター「京」や「Spring-8」という世界最高性能の大型放射光施設などは、外国人学生にとって大変魅力的であり、そういった県や大学が持っている付加価値を提示し、双方向にとってメリットが発生することも共同研究を始めるきっかけとなります。
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)とは、科学技術振興のため国が示す中長期目標に基づき世界トップレベルの研究開発を行う文部科学省所管の国立研究開発法人で、そのうちシンガポール事務所は、東南アジア及び南アジア地域での日本の科学技術の窓口として、JST事業の海外展開の支援、各国の科学者や協力機関との連携強化、最新の科学技術に関する情報についての収集や発信を行っています。
またJSTでのヒアリングによると、日本の科学技術力は高く評価されており、シンガポール国立大学(NUS)のようなシンガポール随一の大学との日本の大学との共同研究を希望する分野がありますが、日本の新聞やプレスリリースが研究内容紹介について英語で書かれたものが少ないため情報をリアルタイムに得にくいという状況があるとのことです。
日本の大学が海外で共同研究を進めるためには、①研究に関することなど、相手にとって魅力的な情報を英語で提供する、②すでに海外に出ている大学等の研究所にアドバイスを求める③日本の大学だけがメリットを得るのではなく、お互いのメリットになるための条件を提示するということということが大きな一歩に繋がります。