5月21日(月)、22日(火)の2日間、東京にて海外経済セミナーを開催しました。
近年、東南アジア市場においては、訪日旅行客の増加、企業の進出、地方産品の販路開拓が進み、多くの自治体が関心を寄せています。シンガポール事務所では、そうした自治体の活動を支援するため、観光誘客や地域特産品の販売促進に取り組む企業、自治体の海外駐在経験者等を講師として本セミナーを開催しています。なお、2017年より、東京都と共催し、東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催を控える東京都の取組等についてもセミナー内で紹介していただいています。
アセアン市場の状況をより理解してもらうためには、現地で活動する方に直接接し、経験談を語っていただくことが最も効果的です。そのため、本セミナーでは、日々の活動の中で知り合った現場のトップランナーに講師を依頼し、海外出張の難しい自治体に対しても、最新かつ具体的な情報を伝えることのできるプログラムとしています。
1日目は、まず農林水産物輸出を専門に研究されている下渡敏治前日本大学教授に基調講演をしていただきました。現在の自治体や事業者による輸出行動の問題点や、今後の取組方法のヒントなど、多くの示唆にあふれた内容でした。
その後、東京都産業労働局や東京都中小企業振興公社、東京都立産業技術研究センターに東京都の国際展開の取組についてご紹介いただきました。また、シンガポール企業庁からは日系企業にとってのシンガポール進出のメリットや、シンガポール企業と日系企業との連携が期待できる分野を紹介していただきました。最後に、アセアン地域で駐在を経験した長野県と岐阜県の職員をお迎えし、各県の国際展開の取組や、駐在したからこそ分かった教訓等についてお話しいただきました。
2日目は、主にアセアン地域から各業界の最先端で活躍する講師をお迎えし、現場の生の声をお伝えしました。ビジットジャパン大使のジョージ・リム氏からは、個人旅行客が日本観光に何を求めているかについて、ユーモアを交えて解説していただきました。また、ムスリム観光客を専門に取り扱う旅行会社Salam Vacationのザキ氏は、ムスリム観光客への対応方法について説明していただきました。Starmark Holdingsの林氏とatomiのアンドリュー氏からは、シンガポールやベトナムの市場で効果的に商品を展開していくための秘訣や心構えをお話しいただきました。JR東日本シンガポール事務所の和泉氏からは、シンガポールにおけるJR Cafeの取組について、またABCクッキングの千先氏からは料理教室をとおして日本の食材を紹介する事業や、自治体との連携事例についてご紹介いただきました。
本セミナーの最大の特徴は、講師と直接話すことのできる意見交換会を設けていることです。参加者は、業務の課題を講師に相談しアドバイスを受けたり、講師を交えた参加者同士で活発に交流したりしており、新たなネットワークの構築につながることを期待します。
今回のセミナーでは、複数の講師が直接のコミュニケーションを通してプロモーションを行うことが必要であると言っており、目が開かれる思いでした。オンライン広報戦略広く多くの人にアプローチすることが可能ですが、一方でウェブ上のコミュニケーションは冷たい印象を持たれるそうです。日本観光についても日本産品についても、リピーターの増加が見込まれる中、従来の発信方法がこれまでほど機能しなくなっているのではないでしょうか。新たな地域の魅力や商品の魅力を提案し、具体的かつリアルに伝えることが求められています。
今回のセミナーについては、後日シンガポール事務所のウェブサイトに報告書を掲載する予定です。シンガポール事務所では、今後も自治体にとって役立つ情報の発信に努めていきます。
2018年度 海外経済セミナー 概要
日 時:1日目-2018年5月21日(月)午後1時~午後5時30分
2日目-2018年5月22日(火)午前9時~午後5時15分
場 所:東京都庁第二本庁舎1階 二庁ホール(東京都新宿区西新宿2丁目8−1)
主 催:一般財団法人自治体国際化協会シンガポール事務所、東京都
参加者:地方自治体職員(物産観光、中小企業支援、国際関係担当者など)
各地域の観光協会や中小企業振興団体など
1日目52名、2日目55名
【1日目】
■基調講演
・「日本食のグローバル化と農産物輸出の展望と課題」
前日本大学生物資源科学部教授 日本フードシステム学会顧問 下渡 敏治氏
■講 演
・「中小企業世界発信プロジェクト」
東京都産業労働局 商工部 企画調整担当課長 山崎 貴晃 氏
■「東京と日本各地の連携による外国人旅行者誘致について」
東京都 産業労働局 観光部 観光施策担当課長 齋藤 順 氏
・「東京都における海外販路開拓の体系」
東京都 産業労働局 商工部 海外販路開拓担当課長 原 郁 氏
・「東京都中小企業振興公社による海外展開のサポートについて」
(公財)東京都中小企業振興公社 事業戦略部 国際事業課課長 須﨑 数正 氏
・「東京都の海外展開事業等について」
(地独) 東京都立産業技術研究センター 技術経営支援室 内田 聡 氏
・「日本企業とシンガポール企業との連携可能性」
シンガポール企業庁 地域代表 ショーン・オン 氏
■講 演 「海外駐在経験者(自治体職員)による経験談」
・「長野県産業の国際展開支援」
長野県 産業労働部産業立地・経営支援課 中小企業支援係 担当係長 福田 修一 氏(前クレアシンガポール事務所 長野県駐在員)
・「飛騨・美濃じまん海外戦略プロジェクト」
岐阜県 商工労働部観光国際局 海外戦略推進課 欧米誘客係 課長補佐兼係長 加藤 英彦 氏(元日本政府観光局シンガポール事務所 次長)
【2日目】
■講 演
・「Japan Tourism: Challenges & Opportunities」
ビジットジャパン大使 ジョージ・リム 氏
・「Muslim Japan Travel」
Salam Vacation アウトバウンドマネージャー アハマド・ザキ・ビン・ウダ氏
・「agataモデル:日本産品をシンガポール・ベトナムで販売する5つの出口と取り組み事例」
Starmark Holdings Pte. Ltd. 代表取締役 林 正勝 氏
・「日本製の商品を海外で販売するatomiの成功要因と今後の展望」
atomi Pte. Ltd. Co-founder アンドリュー・タン 氏
・「シンガポールJAPAN RAIL CAFEでの訪日プロモーションの取組」
東日本旅客鉄道㈱シンガポール事務所 シニアマネージャー 和泉 孝斉 氏
・「ABCの自治体との取り組みのご紹介」
ABC Cooking Studio Worldwide Ltd. ディレクター 千先 拓志 氏
■事業説明
・「自治体国際化協会シンガポール事務所事業内容について」
(一財)自治体国際化協会シンガポール事務所 所長 橋本 憲次郎
・「経済交流関係事業について」
(一財)自治体国際化協会東京本部 経済交流課 課長 小川 賢司
■意見交換会