北海道大学公共政策大学院が、2018年10月に、道内産農林水産物の輸出・販売状況の調査、公共政策系大学院での教育内容の調査としてシンガポールを視察されました。
クレアシンガポール事務所では、同大学院が、「グローカル」な視点・北海道発の公共政策を教育理念として掲げ、道内自治体との積極的な連携を図っており、かつ、同大学院の院生にはこれまで現役公務員の方やこれから公務員を目指す方も多く在籍していることから、連携を強化していく観点から、訪問先のアポイントメント取得・同行を行いましたので、その内容について報告します。
北海道ASEAN事務所及びMEIDI-YA内の北海道のアンテナショップ「北海道どさんこプラザシンガポール店」を訪れ、北海道の農産品・水産加工品・乳製品・お菓子の人気の高さ、販売における工夫や課題を伺いました。北海道というブランド力を活かした商品紹介は好調な一方、
新商品を含めた品揃えを含め、充実した企画を継続していくことが課題とのことであり、現在行われている官民様々な主体による販路開拓がその課題をサポートしています。
また、北海道ASEAN事務所では、2018年9月に発災した「平成30年北海道胆振東部地震」を受け、海外から北海道への旅行者向けに、交通インフラ等の復帰状況を早期に分かりやすい案内チラシでPRしたという取組を伺いました。
National University of Singapore(シンガポール国立大学)のLee Kuan Yew School Of Public Policy(以下「LKYPP」)は、2004年より”A world transformed through good governance and leadership excellence”をビジョンに、公共政策教育を担っています。院生の80%はシンガポール国外からの留学生であり、世界約70ヵ国から集まっており、公務員も多く在籍しています。LKYのあるコースでは、1965年の建国以来政策を創ってきたPolicy Makerが直接院生に経験を語ることができる教授陣がいるとのことです。
今回お話しを伺った青木尚美アシスタント・プロフェッサーは、授業を行う際は、原則対話形式で各国の具体的な政策事例を取り上げ、公務員に必要な資質(規範性・リーダーシップ・柔軟性等)が身に付く講義を提供されています。例えば、比較行政として、院生が自分の母国の地方自治制度を数個のコンテンツ(人事給与制度・人材育成制度・財政制度・税制度・住民参画制度等)毎に自らプレゼンを行い、他者との共通点・相違点を院生同士が議論する講義があります。他国の地方自治制度を知ることで、共通の課題や相違点から自国の課題解決につながるヒントを得られると考えられます。
日本で産官学連携が謳われて数年が経った今、世界はよりグローバル化に向かっている中、各分野のアクターだけでは解決できない課題が多くあります。
北海道の農産物は国内だけでなく海外でも強みを持つキラーコンテンツであり、今後の更なる産官学の連携による海外展開に期待を寄せます。
そして、北海道に拠点を置く公共政策大学院が、公共部門に携わる人材育成に当たってシンガポールの公共政策教育の強みを織り交ぜ、北海道の未来を支えていかれることを応援してまいります。