10月16日(火)から20日(土)にかけて、大分市商工労働観光部長を団長とした、大分市内に事業所を有する中小企業者からなる経済ミッション団がベトナムのダナン市とホーチミン市を訪問し、ベトナムの現状を把握するとともに、ビジネス展開の可能性について調査しました。
大分市は、1964年に新産業都市の指定を受けて以降、国内有数の製鉄所や九州唯一の石油化学コンビナートが立地し、飛躍的な発展を遂げました。鉄鋼、化学、半導体、電子、電子機器など最先端の技術を持つ多種多様な企業が進出している同市は、経済産業省の平成26年工業統計調査によると、製造品出荷額が九州で第一位になっています。
今回の視察では、ダナン市副市長や同市投資促進支援委員会、ホーチミン市商工局、また、現地企業や日系企業も訪問し、ベトナムの経済情勢や日系企業の進出状況などについて意見交換を行いました。
以下、主な訪問先概要について報告します。
10月17日(水)、ダナン市役所において、同市投資促進支援委員会の副委員長から投資先としてのダナン市の魅力について説明を受けました。
同委員会は、ダナン市人民委員会によって設立された機関で、同人民委員会への投資促進活動に関するアドバイザーの役割を担っています。また、投資環境や投資機会に関する活動やビジネスネットワーキングなどを行い、投資家をサポートするとともに、市内の投資プロジェクトの設立・運営を促進しています。
ベトナム中部の中心都市であるダナン市は、ベトナム南北を結ぶ物流ルートとして重要な拠点となっており、またミャンマー、タイ、ラオス、ベトナムを結ぶ東西経済回廊の終点ともなっていることから、複数の工業団地に70社を超える日系企業が進出しています。
また、美しいビーチ沿いには多くのリゾートホテルが建ち並び、4つのUNESCO世界遺産にもアクセスが容易で、近年は日本からの観光客も多く訪れているエリアです。
ダナン市の2017年の一人当たりGDPは3,289USドルとなっており、ベトナム全体の2,358USドルに比べて高い水準となっています。
ダナン市には、投資先としての戦略的なロケーションや先進的なインフラ、開放的な投資促進政策、顧客志向型行政サービスといったメリットがあるとの話でしたが、最大の魅力は豊富な人的資源と言えます。
人口の約55%を占める58万人を超える労働人口を有し、25の大学・短期大学、19の高等専門学校、59の職業訓練センターがあり、高い教育水準を誇っていることから、質の高い労働力を供給しています。一方で、ハノイやホーチミンに比べ、安い平均賃金といった特徴もあります。
10月18日(木)、ホーチミン市商工局を訪問し、副局長から説明を受けるとともに、意見交換を行いました。
ベトナム南部の中心都市であるホーチミン市は、ベトナム最大の商業都市でもあり、約800社の日系企業が進出しています。製造業のみならず、百貨店やスーパーも相次いで進出するなど、消費市場としても関心が高まっています。
全国の企業数の半分ほどがあるホーチミン市の主要な産業は、機械、化学、電子、食品となっています。またサービス業にも力を入れており、中でも小売業はサービス業全体の約20%を占めています。
2017年のホーチミン市の輸出額は約48億USドルとなっており、ベトナム全体の約14%を占めています。ホーチミン市から日本へは、機械部品、衣料品、自動車部品、水産物、電子部品、革製品などを輸出しており、日本からは、加工機械、布、鉄鋼、電子機械などを輸入しています。
現在、ホーチミン市では日本のODAにより地下鉄1号線(最終的には6号線まで整備される計画)を建設中です。同市中心部から郊外までを結ぶ総延長約20kmの路線で、2020年の開通予定となっています。また、2025年にはタンソンニャット国際空港に代わる新空港がホーチミン市から東約35kmに位置するドンナイ省に建設予定となっています。
大分市からは、裾野産業の育成、また工業系の人材育成についてどのような政策を行っているか質問がなされ、ホーチミン市では、海外投資家や企業が進出し、機械部品等のニーズが生まれ、それを市内の中小企業が受注することで発展していくと考えていることから、まずは海外投資家や企業の誘致に注力し、併せて市内企業への設備投資支援や技術的支援なども行っているとの回答がありました。また、日本への留学や国内の大学にいながら技術習得できるシステムの整備にも力を入れているとのことでした。
今回は、政府機関の他にも現地企業や日系企業を訪問しました。ソフトウェアアウトソーシング、オフショア開発サービスを提供している東南アジア最大手のベトナムIT企業FPT Software Companyや昭和電工グループのアルミニウム製缶メーカーHanacans Joint Stock Company、日系企業のベトナム進出サポートや不動産のあっ旋などを行っているN-Asset Vietnam Co., Ltd.、ベトナムにおいて産業人材の育成に取り組むESUHAI Co., Ltd.などを訪問しました。
また、JETROホーチミン事務所からはベトナムの経済情勢及び日系企業の進出状況について、郵船ロジスティクスからは日本とベトナムの貿易と物流についてお話も伺うなど、とても有意義な視察となりました。
ベトナム人は一般的に、真面目で学習能力が高く、向上心が旺盛だといわれています。しかしながら、優秀な人材を育てても国内に就職先がないとのことで、近年、人口減少や少子高齢化により労働力不足に悩む日本国内企業が多くのベトナム人労働者を採用しており、建設業、製造業、サービス業など幅広い分野で活躍しているとのことです。
当事務所では、所管国の日本国大使館や日系機関、また各国政府機関との連携を深めており、今回、ホーチミン市商工局へのアポイントメントの取り付けを行いました。
ベトナムに限らず、東南アジアの国々では訪問の依頼から正式な受け入れの回答をいただくまで時間を要することが多くあり、対応時間や対応者の急な変更も少なくありませんので、時間に余裕を持って依頼いただくことで、有意義な訪問の決定が行えると考えています。