クレアシンガポール事務所は、2019年1月23日(水)から25日(金)までにかけてインド最大の商業都市ムンバイで開催された、アジア・太平洋地域における最大級の旅行業界関係者向け旅行フェア「Outbound Travel Mart 2019」の取材を行いました。
当事務所職員が現場で見たインドの訪日旅行市場の最新状況をレポートいたします。
主 催 | Fairfest Media Limited |
概 要 | 世界55を超える国とインド国内から1,000以上の出展者が集まった旅行フェア。
ジャパンパビリオンには、JNTOによるインフォメーションカウンターが設置され、パンフレットの配布に加え、専門スタッフによる訪日旅行の情報提供が行われたほか、書道パフォーマンスやVRによる訪日旅行疑似体験が提供された。 |
開催期間 | 2019年1月23日(水)~25日(金) 3日間 |
開催場所 | Bombay Exhibition Centre |
対 象 | 旅行業界関係者(B to B) ※25日(金)の14:00からはB to C |
入 場 料 | 無料 |
来場者数 | 主催者発表待ち
※前回開催時は約15,000人(2018年1月、3日間合計) |
出展団体数 | ジャパンパビリオン:11団体(うち自治体関係1団体) |
インド人海外旅行者数は年々増加しており、2020年には2015年(約2,038万人)の約2.5倍となる5,000万人を超えると予測されています。
インド人旅行者の特徴として、知人・友人を訪ねるVRF(Visit Relatives and Friends)が多く、在留インド人が多い国ほどインド人観光客も増加する傾向にあるようです。
訪問先は、海外旅行初心者が多いシンガポール・タイ・マレーシア・香港及び中東など在留インド人の多い地域、海外旅行中級者が多い米国・英国・オーストラリアなど英語圏の地域、海外旅行上級者が多い日本・韓国・中国などの3つに大きく分かれるそうですが、やはり在留インド人の多い国や英語圏の国が人気であることが伺えます。
【参考】インドからの訪日外客数の推移(出典:日本政府観光局(JNTO))
年 次 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 |
訪日外客数 | 103,084人 | 122,939人 | 134,371人 | 154,100人 |
前年同月比伸率 | +17.2% | +19.3% | +9.3% | +14.7% |
※2018年は推計値
※インドの総人口:1,339,180,000人
(出典:United Nations「2017 Revision of World Population Prospects」)
インドからの訪問先としては、東京~京都・大阪間のいわゆる“ゴールデンルート”が主流となっており、広島や立山黒部アルペンルートも人気があるようです。
インド人訪日観光客は富裕層や知識人が多く、文化・歴史遺産を訪れることを目的とする人が多いとのことです。特に第二次世界大戦の歴史への関心は高く、同大戦後の極東国際軍事裁判において、被告全員の無罪を訴え、また原爆投下を批判したインド人のラダ・ビノード・パール判事の影響もあって、ゴールデンルートに次いで広島が人気の訪問先になっています。
【参考】人気の訪日旅行先
地域 | 内 容 |
東京 | MICE旅行などビジネス観光客が多いが、出張に数日~数週間の休暇をプラスしたブレジャー(ビジネス+レジャー)旅行の需要が増加傾向にある。 |
立山 | 雪を見たいという希望が多く、中でも立山黒部アルペンルートの人気は高い。現地旅行会社のパンフレットにも「雪の壁」の写真が使われていた。 |
中部 | 直行便や経由便が就航する成田空港~関西空港間の移動中に立ち寄る方や、立山黒部アルペンルートへの起点とする方が多い。 |
関西 | 京都や奈良の文化・歴史遺産を訪れることを目的とする人が多い。 |
広島 | 第二次世界大戦に関する歴史への関心が高く、原爆ドームや平和記念資料館を訪問する方が多い。ゴールデンルート+広島が主流。 |
インドからの訪日旅行者数は順調に伸び続けていますが、海外旅行者数が2005年から10年で約3倍に伸びているのに比べ、訪日旅行者数は2005年から12年で2倍強しか伸びていないということで、物価の高さに加え、言語(英語)や食事への対応不足といったところが伸び悩んでいる原因のようです。
しかしながら、今後は経済成長やビザの発給要件緩和などに伴い、これまでは一部の富裕層のみが可能であった訪日旅行も、中間層にも手が届くものになっていき、市場はこのまま順調に推移していくと考えられます。
その際、ベジタリアンやインド料理への対応が求められますが、他国ではキッチンツアーと呼ばれるシェフを同行させるツアーが人気となっており、ホテルもバンケットやキッチンを貸し出すなどして対応しているとのことです。
また、“ボリウッド”と呼ばれるインド映画は、作品数・入場者数で世界最大規模となっており、映画のロケ地がそのまま人気の観光地になることが多いようです。例えば、2011年に公開された「ジンダギ・ナ・ミレギ・ドバラ」という映画は、インドで興行収入約15億円を超える大ヒットを記録しましたが、この映画が撮影されたスペインへのインド人観光客は、2010年の約75,000人から翌年には約115,000人と4万人も増加したとのことで、映画のロケ地誘致と併せたアプローチもインド市場に対しては絶大な効果があるようです。
JNTOデリー事務所は、本旅行フェアに出展することで、インド市場に新規に進出する賛助団体・会員にネットワークの機会を作るだけでなく、旅行フェアと連動したセミナー及び商談会を実施することによって、より多くの現地旅行会社と交流の機会を設けるようにしているとのことでした。
当事務所では、引き続きJNTOと連携しながらインドの訪日旅行に関する最新の動向を収集するとともに、情報発信してまいります。