クレアシンガポール事務所は、2019年7月31日にインドネシアのジャカルタ市内において、日本国総務省及びインドネシア国家行政院(NIPA)と共同で、インドネシアの自治体職員向けに「日本インドネシア知識交流セミナー 2019」を開催しました。
インドネシアでは、その地理的条件から、地震、津波、地滑り、火山の噴火など多くの自然災害が発生しており、それによる被害も出ています。しかし、その災害対応に当たっているのは、主に国や軍隊で、地方自治体レベルでの災害対応や危機管理体制の構築は、まだ十分に行われていないのが現状です。
今回のセミナーは、そのようなインドネシアの現状を踏まえ、「災害対策と危機管理」をテーマに、兵庫県と陸前高田市から自治体職員2名を講師として招へいし、震災の経験を踏まえて、災害時において地方自治体が果たすべき役割と災害時に必要とされる関係機関同士の協力について、講演いただきました。
セミナーには、インドネシアの自治体職員等100名が参加し、経験に基づき語られる両講師の話を非常に熱心に聞いていました。また、各講師の講演後に設けた質疑応答の時間には、時間が足りないほど多くの質問が寄せられ、インドネシア地方自治体における災害対応への危機意識と関心の高さが窺えました。
寄せられた質問の中には、
〇津波により土地の形状が変わってしまうことがしばしばあるが、日本では、津波による被害状況について、どのようにデータ収集しているか
のような技術的な質問もありましたが、
〇地域のコミュニティはどのように災害対応に関わるべきか
〇災害に向けた避難のシミュレーションを行っていたが、地震が発生した際、15分後に来ると予想していた津波が3分後に来たり、避難場所として指定していた高台が液状化により避難場所として機能しなかった。日本ではどのように対応しているのか。
など、災害対応を行う上での体制整備等に関する質問が多く寄せられました。
その中から1つの質問と回答を紹介させていただきます。
〇公務員が被災者となった場合、家族を守ることと、住民のために働くことのバランスはどのように取られているか。
という質問で、陸前高田市の講師の回答は以下のとおりです。
●東日本大震災の際も1ヵ月以上家に帰れなかった職員がほとんどで、これについては反省している。自宅に帰ることができるように支援することが必要で、対応としては、被害の少ない職員が被害の多い職員の仕事を代わったり、または、被災していない外部の人から助けてもらうことが考えられる。それには、普段からそのような関係を構築しておくことが重要。
私自身も自治体職員ということもあり、考えさせられる質問でしたが、多くの参加者が頷きながら聞いていたことから、国や地理的要因、災害の種類等によって、災害時に求められる対応は様々ですが、地域や個人レベルで抱える課題には共通するものが多いように感じました。
その切実な課題を共有し、課題解決に向けて意見の交換が出来た今回のセミナーは、日本とインドネシアの自治体間の距離を縮め、今後の継続した情報・意見交換を行う上での関係作りに寄与できたものと思います。
今後も当事務所では、両国における自治体同士の交流を促進するとともに、ひいては、日本、インドネシア両国の関係強化を図ってまいります。