2019(令和元)年10月4日から6日まで、フィリピン・ダバオにおいて、「ダバオ日本人コミュニティ100周年記念事業」が開催され、ダバオ市と環境姉妹都市である北九州市から北橋健治北九州市長をはじめとする訪問団が参加しました。
訪問に際し、当事務所が同行支援を行いましたので、訪問の様子をご報告します。
1 ダバオ市に集まる注目
ダバオ市はフィリピン・ミンダナオ島の南東部に位置し、マニラ・セブに次ぐ第3の都市であり、同国のロドリゴ・ドゥテルテ大統領が長く市長を務めたところでもあります。ダバオ市の行政面積は2,444㎡(参考:東京都2,193.96㎡)でマニラ首都圏の3倍に当たり、「市」としては世界最大となっています。市域面積の約50%は植林地や熱帯雨林であり、国内外に販売するバナナ、パイナップル、コーヒー、ココナッツ等を栽培する巨大プランテーションが農業用地のほとんどを占めています。
ダバオ市が発展したきっかけは、20世紀初頭に日本人が麻栽培の農園を経営し始めたことであり、当時は2万人の日本人が住む東南アジア最大の日本人街もありました。
ドゥテルテ大統領の就任後、政府主導の大規模なインフラ整備計画「ビルド・ビルド・ビルド」がミンダナオでも実施され、さらなる開発や将来的な発展が期待されています。地政学的に見ても、東ASEAN成長地帯、南太平洋への入口でもあり、天然の良港であるダバオ湾に面し、ブルネイ・インドネシア・マレーシアなどの諸国につながるハブ拠点として、熱い注目が集まっています。
2 ダバオ市と北九州市の関係
ダバオ市では、経済活動の拡大に伴い廃棄物発生量が増大し、廃棄物最終処分場の負荷抑制が喫緊の課題となっていました。そこで、北九州市は民間企業との共同で、廃棄物の大幅な減量化とそのエネルギー利用を同時に図る「廃棄物発電施設」のフィリピン初となる導入を目指し、2014年より、ダバオ市において廃棄物処理状況や関係法制度の調査などを実施してきました。こうした事業を加速させるため、北九州市とダバオ市は2016年11月「戦略的環境パートナーシップ協定」を締結し、2017年4月にはダバオ市が自発的にごみの減量化ができるよう、JICA草の根技術協力事業を活用し、ごみの分別指導や生ごみのコンポスト化などを通じた人材育成を開始しました。こうした取り組みの中で、2017年11月に両市は「環境姉妹都市」提携に関する覚書を締結するなど、環境事業を軸にした、深い関係を築いてきました。
3 日本人コミュニティ100周年事業
前述のとおり、ダバオで麻栽培等に日本人が従事し始めたのは20世紀初頭からで、1920年頃には定住者による日本人コミュニティが成立しました。インフラ整備の機運が高まり、ダバオの可能性に注目が集まる中、2019年1月に日本の在ダバオ領事事務所が総領事館に格上げされたことをきっかけに、2019年をダバオと日本の過去100年を振り返り、今後の100年を見通す機会とするため、10月に「ダバオ日本人コミュニティ100周年記念事業」として日本文化紹介イベントが開催されることとなりました。
今回、環境姉妹都市である北九州市にも参加要請があり、北九州市長や北九州市議会議長をはじめとする訪問団が本イベントに参加しました。オープニングセレモニーにて市長があいさつやテープカット等を行ったほか、北九州市の伝統芸能である「五平太ばやし」を北九州市職員の愛好会グループが披露するなど、ダバオ市民に北九州市の存在を大いにアピールすることが出来ました。イベントの中では盆踊りやコスプレなど、幅広い日本文化の紹介が行われ、現地の人々も大変盛り上がっていました。
4 今後の期待
今回の訪問中には、ダバオ市のサラ・ドゥテルテ市長と北九州市長が意見交換を行い、これまでの協力関係を振り返るとともに、特に環境分野における人材育成について、さらなる連携強化を誓うなど、大変実りある行程となりました。
ダバオ市はその歴史的背景からも非常に親日的な地域であり、今後も日本との関係がさらに緊密になっていくことが期待されています。