2019年11月20日(水)~24日(日)で、ミャンマーの経済の中心であるヤンゴンを訪問しました。日系機関等との連携強化と、東南アジア鹿児島県人会主催のビジネスツアーに参加して、最新の現地情報を収集しましたので、その概要を報告します。
鹿児島県は東南アジア諸国にも県人会組織があり、毎年持ち回りで、東南アジア鹿児島県人会を各国で開催しています。
今年度はミャンマーで初開催となり、ミャンマー鹿児島県人会主催でビジネス視察ツアーが催され、弊所も参加させていただきました。
ミンガラドン工業団地を視察し、JETROヤンゴン事務所で、JETROをはじめ、㈱上組(物流)、三菱UFJ銀行(金融)、ティラワ経済特区(SEZ)の担当者からブリーフィングを受け、最新のミャンマー経済、業界動向等を伺いました。
映画『ビルマの竪琴』の舞台でも知られるミャンマーは、親日国として知られ、歴史的な所縁とともに、長年の日本のODA援助や投資を通じて、日本との結びつきが深まっています。
2011年民政移管後の経済開放により、輸出入規制の緩和、外国投資法の制定など、経済自由化への施策を推し進めています。経済成長率が7~8%台を誇っていた頃と比較するとやや鈍化しているものの、現在でも6%台と高い成長率を維持しています。
視察した際も、ヤンゴン市を中心に、近代的な商業ビルやホテルの建設ラッシュで、都市開発が加速している印象でした。
一方で、タイやベトナムなど、ミャンマーに先行した新興国の経済成長からみると、ミャンマーは、都市部でも頻繁に停電があり送電網が未整備なことや、交通・下水道など、社会的なインフラ整備がまだ不十分な現状です。また、透明性や効率性が低い行政機能や、ロヒンギャ問題(ロヒンギャと呼ばれるイスラム系少数民族に対する迫害)もあり、急速な経済発展に社会インフラや外交問題の解決が追い付いておらず、喫緊の課題となっています。
ヤンゴン中心市街地から南東約23kmに立地する、ティラワ経済特区は日本とミャンマーが官民一体となって開発を進めた工業団地です。ヤンゴンで初の工業団地として開発された、ミンガラドン工業団地に次ぐ大型開発で、製品を加工・輸出する拠点して注目されています。日系企業の主導で誘致が進められ、予約契約ベースで109社の進出が決定しており、既に75社が操業を開始しています。
このSEZで特徴的なのが、投資手続きの一元化が可能になったワンストップサービスセンターの展開で、首都ネーピードーに行かずとも、輸出入許可証や納税などの手続きがSEZ内で完了できるようになりました。このような投資環境が改善されたことで、食品加工や縫製、機械など、進出業種が多様化しています。
①市場ポテンシャルの高さ
人口が約5,400万人、平均年齢が27歳程度と若く魅力的な国内市場に加え、中国、インド、タイなど成長著しい国々と面した要衝という地理的優位性に注目して、年々投資件数は増えています。2018年度の外国投資件数は282件(出所:JETROビジネス短信)で過去最高となっており、この国のポテンシャルに対する期待度の高さが伺えます。
また、直近の話題として、2020年にはトヨタの新工場が建設されるとのニュースも聞きました。実際に視察中、ヤンゴン市内は、バイクの数より圧倒的に車両が多く、特にトヨタ、スズキ製の中古車のシェアが高く、夕方は交通渋滞も発生するほど、自動車が溢れていたのが印象的です。大手日系企業の進出はミャンマー政府の関心も高く、裾野産業の発展と雇用の創出に貢献することが期待されています。
このように外国投資をエンジンとした産業の発展とともに、今後は、渋滞による排気ガスなど、環境との調和も不可欠になってくると思われます。
②豊富なミャンマー人材
日本国内の労働力不足の解決に向けて、外国人材の活用が図られる中、ミャンマー人材へも注目が高まっています。
今回、ヤンゴン市内の日本語学校・送り出し機関であるJ-SATを訪問しました。
同社の日本語教育の受講者数は3,600人で、卒業生達は、日本全国の企業へ送り出されています。近年、JLPT(日本語能力試験)の受験者数がベトナムに迫る勢いで、日本への関心が年々高まっているそうです。
しかしながら、ミャンマー人の履歴書の捏造など、多発する問題もあり、日本語能力だけでなく、送り出し機関が適正な人材を見極めることも重要、との話もありました。
長期にわたる軍事政権の鎖国的な政策による影響や、労働力に対してミャンマー国内の雇用が不足している現状もあり、優秀なミャンマー人は他国での就労機会を得るのが多い傾向です。
一方で、各国の受け入れ先でミャンマー人材がどう扱われているかという情報には敏感で、会社を選ぶ基準として、自分のやりたい仕事やモチベーションを重要視していることも、ミャンマー人の特徴としてあげられるとのことでした。
親日国ということもあり、注目されるミャンマー人材ですが、送り出し前に、スカイプ等を使った研修や、来日後の精神的なケアなども、人材活用の鍵になるようです。
2020年は日本との平和条約締結発効65周年を迎えるミャンマー。当事務所も引き続き最新の情報を収集するとともに、日本とミャンマーの相互の利益享受に繋がるよう、今後益々の友好な関係構築の深化が期待されます。