2019年8月、北九州市と国連環境計画(UNEP)アジア太平洋地域事務所は、東南アジアにおいて問題となっている、プラスチック廃棄物による海洋汚染の防止に連携して取り組んでいくことを発表しました。これにより、深刻化する東南アジア諸国の海洋プラスチック問題の解決を目指しています。この先進的な取り組みについて、クレアシンガポール事務所が取材しましたので、ご報告します。
北九州市は、1980年代より東南アジアにおける環境国際協力を実施しており、特に2010年に開設した「アジア低炭素化センター」を通じて、廃棄物管理、上下水、大気汚染規制等様々な分野で16か国78都市190以上のプロジェクトを実施してきました。
2018年4月にはOECD(経済協力開発機構)からアジア地域初の「SDGs推進に向けた世界のモデル都市」に選定され、「北九州市SDGs未来都市計画」を策定し、更にその取組みを加速しているところです。
国連環境計画とは正式名称をUnited Nations Environment Programme(通称:UNEP)といい、1972年6月、ストックホルムで「かけがえのない地球(Only One Earth)」を合言葉に、開催された国連人間環境会議(ストックホルム会議)にて採択された、「人間環境宣言(ストックホルム宣言)」および「環境国際行動計画」を実施に移すための機関として、同年の国連総会決議に基づいて設立されました。本部をケニアのナイロビに置き、アジア太平洋地域や西アジア地域、ヨーロッパ地域、北米地域等に支部を置いています。オゾン層保護や気候変動、有害廃棄物、海洋環境保護等を主な活動としており、その中でもUNEPアジア太平洋地域事務所(タイ・バンコク)は、廃棄物排出防止や管理、最近では海洋プラスチック汚染に対処するための活動を強力に推進しています。
北九州市はかつて公害を克服した実績とその経験を生かした国際協力について、1990年 UNEPから「グローバル500(※)」を日本の自治体として初めて受賞しました。
その後も北九州市は世界各国で環境国際協力を行ってきましたが、特に2010年以降にタイで行ってきた廃棄物処理に関する事業にUNEPアジア太平洋地域事務所が関心を示していました。2018年11月に北九州市が開催したチェンマイでの廃棄物管理ワークショップにオブザーバー参加していたUNEPから、アジアにおける海洋プラスチック問題解決に向けた連携を打診されたことを契機に、その後の両者による協議の結果、今般の連携強化へとつながりました。
本件に関する具体的な連携事業は2020年から本格的に開始する予定とのことですが、北九州市は職員や専門家をタイやカンボジアに派遣し、プラスチックごみの分別回収やリサイクルの知識を、UNEPと協力しながら現地の自治体に伝えることとしています。
北九州市は、将来的にはアジア全域に同様の取り組みを広げ、「SDGs推進に向けた世界のモデル都市」としての更なるブランド力の向上と市内企業の環境ビジネスの推進強化へと繋げていきたい考えです。
今後、どのように取り組みが進んでいくのか、海洋プラスチックごみ問題に悩まされる世界各国から注目が集まっています。
左 UNEPアジア太平洋地域事務所 Dechen所長
右 北九州市 北橋市長
(※)1987年から2003年まで行われた、持続可能な開発の基盤である環境の保護及び改善に功績のあった個人及び団体を表彰するUNEPの制度。2005年からは後継の「CHAMPIONS of the earth」にて表彰が続いている。
アジア低炭素化センターHP
http://asiangreencamp.net/topix.php?p=172&enc=