クレアシンガポール事務所では、2021年10月から11月にかけて、ABCクッキングスタジオ(以下「ABC社」)と連携して、日本の地方の食材の魅力を伝える料理教室をとシンガポールとタイ(バンコク)で開催しました。シンガポール及びタイではそれぞれ日本の3つの自治体から自慢の食材をご提案いただき、コロナ禍で各国政府が行動規制を敷くなかではありましたが、シンガポールでは117名、タイでは52名の参加がありました。
1.事業概要
2017年以来、5年目の開催となった本事業は、自治体等がPRしたい食材を提供し、ABC社がその食材を活かすレシピを考案して、現地消費者向けに料理教室を行うことが主な内容となります。
現地消費者に調理・試食を通して日本が誇る食材の魅力を実感してもらうことで、食材の購入やSNS等での情報拡散に繋げ、自治体等の販路拡大を支援することを目的としています。また、食材が提供された地方の観光情報を参加者に提供することで、自治体等の魅力が多面的に伝わることも期待しています。
2.料理教室の概要
料理教室は、各国政府による新型コロナウイルス感染拡大防止措置のため、1回あたりシンガポールで4人、タイで4人(11月1日~10日)もしくは2人(同11日~30日)のレッスンを複数の日程で実施しました。PR食材については、応募のあった自治体について過去の参加実績や食材の提供時期といった要素を考慮した結果、シンガポールでは全て現地に商流があるものを使用した一方、タイでは一部の食材についてまだ現地に商流がないものを日本から本事業のために輸入して使用しました。
レッスン期間中には、インフルエンサー及び地元メディアを招待し、レッスンの様子・PR食材等について広く発信する機会を設けました。また今年度初の試みとして、シンガポールにて食材のスタジオ販売を行いました。
上記に加え、各レッスン会場では、モニターでの自治体PR動画の上映や、自治体のグッズ・観光パンフレットの配付など、物産だけでなく観光も含めた地方の魅力発信を行ったほか、自治体が事前に用意した質問事項について参加者にアンケートを行いました。
(1)シンガポールのレッスン
施期間 |
2021年10月18日~10月29日(平日の計10日間) |
会 場 |
ABC Cooking Takashimaya Studio(1会場) |
実施回数 |
30回 |
参 加 者 |
117名(招待インフルエンサーを除く) |
参加自治体 |
栃木県小山市、鳥取県、香川県 |
〇メニュー・PR食材
秋の天ぷらうどん |
讃岐うどん(香川県) 若採り里ごぼう(しょうゆ味)(漬物)(栃木県小山市) だし醤油(香川県) |
ゴボウサラダ(手作りゴマダレで) |
若採り里ごぼう(かつお味)(漬物)(栃木県小山市) だし醤油(香川県) |
柿パンナコッタ |
輝(き)太郎(たろう)(柿)(鳥取県) |
(2)タイのレッスン
実施期間 |
2021年11月1日~30日(土日含む計30日間) |
会 場 |
ABC Cooking Central World Studio/Central Eastville Studio(2会場) |
実施回数 |
Central World Studio:22回 Central Eastville Studio:15回 計37回 |
参 加 者 |
Central World Studio:30名 Central Eastville Studio:21名 計51名(招待インフルエンサーを除く) |
参加自治体 |
群馬県沼田市、和歌山県、愛媛県 |
〇メニュー・PR食材
寿司ブリトー(バター醤油ソースかスパイシーマヨネーズソースで) |
媛(ひめ)スマ(愛媛県) 生醤油(和歌山県) |
梅スパークリング |
冷凍梅(和歌山県) |
マグロ漬焼きサラダ(りんごドレッシング) |
媛スマ(愛媛県) 陽光(りんご)(群馬県沼田市) |
りんごパフェ |
陽光(群馬県沼田市) |
3.実施結果
(1)シンガポールのレッスン
シンガポールにおけるレッスンは、定員120名のところ117名に参加いただく大盛況でした。今年度初の試みとして実施したスタジオ販売も大変好評で、レッスン後の使用食材の購買ニーズが大変高いことが分かりました。
ABC社によると、受講者のうち最も満足度が高かった属性は「あまり料理をしない平均44歳の女性64名」でした。レッスン参加者の85%は女性で、参加者の年代としては40歳代が46%を占めました。国籍はシンガポール人が77%、次いでマレーシア人が16.5%という結果となりました。
アンケートによると、レッスンで使用した食材はとても好評で、食材の味・食感等に関する質問では、ごぼうの漬物及び輝太郎ともにほぼ全ての参加者が「とても良い」または「良い」と回答しました。輝太郎の販売価格については69%が高いと回答したものの、別の設問では95%が「また食べたい」と回答しており、潜在的なニーズの高さが窺えました。自治体名の認知度に関する設問では、栃木県内の地名については、参加自治体の小山市の他に「日光」の知名度が比較的高く、鳥取県については、62%の参加者が本レッスンへの参加が同県を知るきっかけになったようです。日本の食材の購入場所としては小売店での購入が86%と圧倒的に多く、ECサイトが6%で続きました。利用するECサイトとしては、Shopee(43%)が最多、次いでLazada(29%)、Qoo10(19%)と続き、現地系ECサイトが9割を占める結果になりました。料理をする頻度についても質問したところ、朝食・昼食・夕食のいずれの場合も「週に3~4回」と回答した人数が最多となりましたが、2位以下の結果を見ると、昼食及び夕食については料理する人が多く、朝食は毎日料理する人と全く料理しない人がはっきり分かれる傾向があることが分かりました。
(2)タイのレッスン
今回のタイにおけるレッスンでは、政府の新型コロナウイルス感染拡大防止措置の影響を受け、準備途中の段階でレッスン当たり参加人数と実施期間の調整が必要となったほか、実施時期にスタジオ近隣でクラスターが発生するなど、当初予想していなかった困難な状況に見舞われましたが、ABC社において他の料理レッスンの受講者に無料で本レッスンへの参加を可能にするといった取組をいただくなど対応をいただき、予約件数の大幅な低下を防ぐことができました。
ABC社によると、レッスン参加者の80%が女性で、20歳~30歳のグループが42%で最多でした。参加者のABC会員ステータスでは非ABC会員の参加が4割近くに達し、新たな顧客の誘引に繋がったことが分かりました。
アンケートでは、今回レッスンに使用した食材について事前知識はあまり無かったものの(和歌山県産の梅については65%が「知らない」、日本産の醤油は57%、りんごは35%が「買ったことが無い」と回答)、レッスン後の各食材に対する評価は大変高く、冷凍梅については81%が今後購入したいと回答するとともに、陽光は98%、媛スマは96%の参加者が「おいしい」と評価しました。媛スマについては「また食べたいか」を聞いたところ、「また食べたい」が89%(うち「とても食べたい」が46%)と、将来的な購入が見込まれる結果となりました。なお、ABC社によると、商流が無い食材について、「タイで手に入らなくて残念」という意見が複数の参加者から聞かれたとのことです。これ以外にも、参加者から各食材について好意的なコメントが寄せられました。「媛スマとマリネするととても美味しい」といった感想もあり、食材同士の相乗効果によって日本食材の更なる普及の可能性を感じさせる結果となりました。
クレアシンガポール事務所では、コロナ禍にあっても、東南アジアをはじめとする所管国において、日本の地方の魅力を伝えるべく、今後も多様な方法で継続的な支援に取り組んでいきます。