2022 年 11 月 29 日(火)から 12 月 2 日(金)まで、クアラルンプール市(マレーシア)において専門家派遣事業を実施しました。当該事業は、海外の自治体などの行政資質と技術力の向上、人材の育成に資するとともに、日本の地方自治体と海外の地方自治体との友好協力関係を強化するため、日本の自治体職員を現地に派遣し、講義や実技を通して日本の地方自治体が持つ行政のノウハウを伝える事業です。今回は宮城県から、洪水管理・雨水活用の専門家として、宮城県土木部大河原土木事務所の廣瀬敦氏を同市へ派遣しました。なお、同市における専門家派遣事業の実施は、2017 年度に続いて5度目となります。
(※2017 年度実施時の事業報告書)
1 当該事業を実施した背景
近年の気候変動などを背景に、同市内の一部地域では排水システムが対応しきれていない状況に直面しています。直近では、昨年 12 月に発生した大雨によって同市内で大規模冠水が発生し、大きな被害が発生しています。こういった喫緊の課題を克服する目的で、同市から、洪水管理・雨水活用の専門家派遣が要請され、今回の事業実施に至りました。
2 専門家による講義・現地指導の様子
専門家による講義・現地指導には、同市担当局長ほか担当者等約 25 人が参加しました。専門家は、日本国内での浸水対策事例に関する講義や実践的なグループワークを行ったほか、同市内で建設中の雨水貯水槽や、大雨時に水位が上昇しやすい河川合流地点などの現場を参加者と共同で視察して、実地指導を行いました。
講義では、雨水貯留施設の計画策定について、東日本大震災の影響で地盤沈下が発生した石巻市・名取市・松島町の各洪水対策事例を用いて説明するほか、センサーを活用した日常的な管理手法事例などを実際の写真・動画を用いて説明しました。また 3 日目に実施したグループワークでは、内水ハードマップの作成方法について、人命最優先の観点で作成するプロセスを指導し、参加者はグループ内で意見交換しながら積極的に取り組んでいました。
3 まとめ
専門家は4日間の指導の総括として、中長期的(5~10 年)な観点では、雨水貯留槽等のハード整備を計画的に行う必要性がある一方、短期的(3年程度)の視点で喫緊に取り組むべき対策として、人命最優先の観点からハザードマップの整備や、災害時における市役所機能の BCP(事業継続計画)の見直しなどのソフト対策も重要であるとアドバイスしました。併せて、今回の指導を契機に同市の洪水問題が解決に向かうことへの期待を示し、事業を締めくくりました。
事業の執行に立会い、当事業は海外の自治体への知識や技術の伝達だけではなく、日本の自治体にとってもアジア諸国との有意義な情報交換の場及び将来の交流のきっかけとなることを再認識しました。今後も本事業が多くの自治体の皆様に活用されるよう努めてまいります。