近年、スキーを楽しむ旅行者が増えています。
パウダースノーで有名なニセコが欧米豪の旅行者に人気というニュースは数年前たくさん目にしましたが、現在は外国人観光客が増えてしまい、“あまり知られていない日本のパウダースノー”という特別感の希薄化により、東北地方へと“南下”してきています。
市場をけん引するのは欧米豪の旅行者ですが、近年は東アジアや東南アジアからのスキー客も増えています。
今回は雪の降る地域限定の内容ではありますが、「スノーコンテンツの打ち出し方」について、お話しいたします。
観光庁の推計(https://www.mlit.go.jp/common/001280426.pdf)では、2017年にスキーなどを目当てに国内のスノーリゾートを訪れた外国人は16年比30%増の86万人と言われており、また、国内最大級のスキー場「HAKUBA VALLEY」は、2018年~2019年に過去最高の約37万人のインバウンド客が来場したと発表しました。
白馬はもともと長野オリンピック開催の地として有名でしたが、外国人観光客の誘致に早くから取り組み、都市圏や駅からの特急バスを整備し、スキー場や宿泊エリア、食事エリアを結ぶシャトルを用意するなど、アクセスの不便さを払拭し外国人誘致に成功しています。
さらに、JNTOのプレスリリースによると、
(https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/190116_monthly.pdf)
タイでは、2015年に日本の雪文化を発信する東南アジアの初の本格的な雪のテーマパーク「スノータウン」ができたことを皮切りに、2018年にはバンコクでの旅行フェア等でスノーアクティビティ等の特定のテーマについて重点的に情報発信を行ったほか、インドネシアでもルスツリゾートでのスノーアクティビティなどの魅力の体験を通じて、ムスリム層へプロモーションを行いました。
東南アジアでは、天然の雪を見ることができません。
そのため、冬シーズンにおけるスノーコンテンツは大変人気があります。例えば、スノーモンスターで有名な東北地方の蔵王、スノーモンキーの愛称で知られる長野県地獄谷野猿公苑、そして、岐阜県の白川郷。“スノーモンスター”や“スノーモンキー”は英語で愛称がつくくらい、海外でも人気です。
■スキーではなく「スノー」コンテンツ
日本人にとって、雪のコンテンツと言えばスキーやスノーボードではないでしょうか。
しかし雪に触れる機会の多くない東南アジアの旅行者にとって、最初から「スキー」に魅力を感じることは少ないのかもしれません。
マレーシアのある旅行会社は、それまでずっと「スキーアクティビティ」として日本のGALA湯沢スキー場や東北地方のパッケージを売り出していましたが、商品名を「スノーアクティビティ」に変えた途端、マレーシア人に受け入れられるようになったとセールスコール時に話してくれました。
GALA湯沢スキー場は、“東京から新幹線で行ける、駅の目の前にあるスノーリゾート”として東南アジアで知られており、初心者向けのスキーレッスンも充実しています。英語のほか中国語対応が可能なインストラクターを配置しているため、外国人が「スノーアクティビティ」の入門をするにはもってこいの施設です。
「スノーアクティビティ」であれば、かまくら体験や、そりを使った雪すべりなど、スポーツほどテクニックを要求されない印象があるのだと考えています。
また、東北地方のプロモーションで、シンガポールの旅行代理店とタイアップし冬のスノーコンテンツを売り出した際、現地のニーズを熟知している旅行代理店は、蔵王のナイトクルーズや羽黒山のSnow Shoe Walking(スポーツではなく雪の上を歩いてみるアクティビティ)のほか、最上川クルーズで鑑賞する美しい雪景色、銀山温泉やニッカウヰスキーの宮城峡蒸溜所、世界最大のクラゲ水族館・鶴岡市立加茂水族館などをパッケージにしたツアーを造成しました。
特別なものを見たい、なかなか行けないところに行きたい、雪は体験したいけどスキーをするほどではない、というシンガポールのシニア富裕層に向けた商品で、スノーコンテンツを売り出すために、周辺の魅力ある場所をさまざまに組み込んでいるのが分かります。
近年は圧倒的にツアー客より個人で飛行機やホテルなどを手配するFIT(Foreign Independent Tour)のほうが多いですが、旅行会社が取り扱っている鉄道パスを買いに来て情報を仕入れたり、タビナカの1dayツアーでスノーアクティビティが楽しめる商品を求める層はまだまだ多い印象です。
また、雪の深い地域ですと個人手配が難しいところもありますので、旅行会社を頼るケースもあります。
■スノーアクティビティ以外に何ができるかが重要
よほどのスキーヤーでなければ、1週間近い滞在中でスノーコンテンツだけで十分ということは少なく、訪れた先で何ができるかが重要です。
先述したGALA湯沢スキー場は、ゲレンデ内に「ガーラの湯」も完備されています。温泉も一緒に楽しみたい旅行客にとっては、1度に2つのコンテンツが楽しめる機会となります。
磐梯山温泉ホテルは、外国人観光客の要望に応え、バーの営業開始を午前9時からに変更しました。以前は午後7時からでしたが、朝からお酒を飲む外国人も多い上に地酒はお土産としても人気が高く、売り上げも伸びたとの後日談でした。
また、青森県にある南田温泉はリンゴが湯船に浮かんだ温泉で、フォトジェニックな温泉コンテンツとしてもプロモートに力を入れています。
温泉やバーでなくとも、例えば夜に雪上で満天の星を見るツアーを催行しているスキー場や、流氷の中をクルーズする企画を打ち出している地域もあります。また、前回紹介した「クラブメッド 北海道 トマム(北海道占冠村)、「クラブメッド 北海道 サホロ(北海道新得町)」のように宿泊施設がオールインクルーシブでそれ自体を楽しむことができるというのも魅力的でしょう。
また、雪景色の発掘も必要です。
シンガポールを対象に行った東北地方のプロモーションでは、見込み客100名を招き、宮城県白石市のキツネ村や、新潟県の星峠の棚田など、写真映えする景色を旅行代理店やゲストに紹介するセミナーを実施しました。これらは、年々日本の冬の経験値が高くなるシンガポール人に向けたもので、ただ雪を見てくださいと訴えるこれまでの施策から、「雪×何か」のコンテンツを見せようとした流れとなり、参加者はプレゼンテーションスライドを写真に撮ったりしていました。
しかしながら新しい観光地として定着するには数年を必要とします。「スノーモンキー」の愛称で有名な長野県の地獄谷温泉がアメリカの「TIME」の表紙を飾ったのは何年も前ですが、現場の感覚では現在やっと、東南アジアのリピーター層の訪日が増えてきた印象です。
ベストシーズンや時間帯などを説明しながら、現地の人の反応を窺いつつ、どのコンテンツに人気が出そうかを探っていく必要があります。
2019年9月にシンガポールにおいてJNTO主催で行われたJapan Travel Fairでは、多くのシンガポール人に「スノーモンキーを見に行きたいけどどう行けばいいの?最寄り駅は?どれくらい歩くの?特別な靴は必要なの?」と、たくさんの質問を受けました。
数多くある日本のスノーコンテンツの中で、ここに行こうと思えるきっかけを作り、有名になるまで何度もプロモートしていくことで、多少アクセスの悪い場所でも魅力的な観光地になります。
スノーモンキーが外国人観光客の間で有名になったのはすでに何年も前ですが、今やっとシンガポール人の間で見に行くことが現実のものになってきたのです。
プロモーションをしても有名になって結果が出るまでは時間がかかりますが、根気強く知名度を上げていくことが重要です。
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クレア担当者の所感
東南アジアでは、スキーをしたいというよりも、雪への憧れで雪に触れたいという声が多く聞かれます。スノーモービルやバナナボート、ソリなど多様なアクティビティが体験できるスキー場も多く、他にも、スノーキャニオニング、かんじきを履いた山歩き、ゲレンデにおけるコンサートなど各地で工夫を凝らした取組が行われています。
複数地域周遊ツアーも増えており、蔵王の樹氷(スノーモンスター)や、ウィンターシーズン以外で雪が見られる黒部アルペンルートの雪壁などの人気スポットと組み合わせたツアー造成に取り組む自治体の声も聞かれました。スキー場プラスワンを上手く組み込むことが、今後は重要になってくると感じました。
クレアシンガポール事務所
所長補佐 薄田 郁美(新潟県より派遣)
記事配信元
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総合PR会社 株式会社ベクトル
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L:
代表取締役 西江肇司
設立:1993年3月30日
資本金:
資本金:2,195百万円(2018年8月31日現在)
連結社員数:約1300人
事業内容:PR企画立案及び実施/PR業務代行・コンサルティング/ブランディング業務/
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