みなさまは「ヘイズ(Haze)」という言葉を耳にしたことはありますか。
日本では春になると、中国大陸からの黄砂やPM2.5が飛来し、海外からの大気 汚染が深刻な環境問題になりますが、シンガポールやマレーシアではヘイズが5月~10月頃に発生することがあります。
ヘイズとは、インドネシアのスマトラ半島などにおける大規模な焼畑によって生じた大量の煙が季節風に乗ってシンガポールやマレー半島などに流れることでもたらされる煙害を指します。ヘイズが深刻化すると視界が悪化し独特の焦げたような臭いが大気中に充満するだけでなく、目や喉の痛み、さらには気管や肺などの呼吸器系や循環器系の健康被害をもたらします。実際、当事務所の 職員の中にも目のかゆみや息苦しさを訴える者がいました。
シンガポールのヘイズ対策はNEA(National Environment Agency:国家環境庁 )が所管しており、人体に影響する健康被害の度合いを以下のようにPSI (Pollutant Standards Index)という数値を用いて発表しています
一般的な状態(人体への影響はほぼなし)
心臓疾患や呼吸器疾患を持つ人は屋外活動を減らす。 健康的な人でも活発な屋外活動を控える。
心臓疾患や呼吸器疾患を持つ人は屋内にとどまる。子どもや高齢者は可能な限り外出しない。
子どもや高齢者は屋内にとどまる。健康的な人でも可能な限り外出しない。
一般的にヘイズは乾季で季節風がシンガポール方面に向くシーズンに発生することが多く、昨年は8月下旬にPSIの値が「不健康」水準とされる101以上を記録しました。
なお、これまでのワースト記録は、2013年6月に発生し、従前のPSI226を大幅に更新するPSI401です。このときシンガポール政府は、国が備蓄していた300万個以上のマスクを小売業者に供給するとともに、低所得者を対象に100万個のマスクの無料配布や冷房装置を有するコミュニティーセンターの開放等の対策を講じました。
NEAではヘイズに関する情報やリアルタイムのPSI値を提供しています。幸い2016 年度はほとんどヘイズが発生しませんでしたが、シンガポールへ渡航される際は、事前にこれらの情報をチェックしておくことをおすすめします。
〔参考〕シンガポール国家環境庁HP 〈 http://www.haze.gov.sg/ 〉
(シンガポール事務所所長補佐 安田)