「やはり暑いな。」
2026年×月、マレーシアの首都クアラルンプール在住の日本人駐在員・加藤は終業後、今年開業したばかりの高速鉄道を利用し、僅か90分でシンガポールに到着した。ジュロンイースト駅から中心部へは大衆化した自動運転タクシーで向かう。早速ロングバーに行き、シンガポールスリングを飲みつつ、ベトナムで働く松田と合流した。
松田によると、ベトナムの小学校で日本語が第一外国語となって10年が経った影響からか、日本の自治体で働く国際交流員(CIR)などベトナム人高度人材の採用が増加しているという。バーのVR(バーチャルリアリティー)TVでは、2026年サッカーW杯にASEAN諸国として初出場となったタイがブラジルと対戦している。今大会から本大会出場国が48ヶ国になったことによるものだ。
日本では10年前から進められる「働き方改革」がすっかり定着、ICTの発達もあり、リモートワークが一般化した。シェアリングエコノミーで住居を確保し、ASEAN諸国に滞在、現地から日本の業務に従事するスタイルも珍しくない。日本からの距離が近く、LCC路線が多いフィリピンは麻薬対策の成果があがり治安が安定し、世界遺産の教会を擁するビガン歴史都市など観光分野で新たな一面を見せ始めている。一方、2億8千万の人口を抱えるインドネシアでは中間層が増加し、訪日旅行客が急増。ハラールメニューなどムスリム対応をいち早く整備した日本は1番人気の訪問先だ。バリ島で結婚式を挙げた小暮にとって東京で見かけるインドネシア人には感慨深いものがあるようだ。
翌日2人は今や「ラオス・プラスワン」と呼ばれ、経済成長著しいミャンマーの旅行フェアへ行き、以前の同僚である梅澤と10年振りに再会した。「今の竪琴を持った仏僧は佐々木に似ていたね。」などと昔話に花を咲かせながら。
※ 2026年のASEANを予想したフィクションであり、登場者も架空の人物です。
事実の正誤につきましては、10年後に御自身でお確かめください。
(シンガポール事務所所長補佐 佐々木)