シンガポールでの移動手段として欠かせないMRT(都市高速鉄道)。5路線が開通しているほか、新規開線、延伸に向けて3路線が工事中です。現在営業している駅は102駅、1日に延べ約280万人が利用します。公共交通を充実させ、交通渋滞の発生を抑制することにより国内での移動が容易になっており、例えばチャンギ空港から市内へのアクセスのしやすさはシンガポールの強みの一つです。
シンガポール政府は今後もMRT整備を推進する方針で、2030年には、営業距離を香港や東京を超える360キロまで伸ばす計画を立てています。
そんなシンガポール人の足であるMRTですが、他の都市同様、混雑や利用マナーの低下が問題となっています。そういった問題に対してシンガポール陸上交通庁が実施する施策を紹介します。
オフピーク通勤を促進するため、2013年から試験的に導入された制度です。平日の始発から午前7時45分までに市中心部の駅の改札を出ると、運賃が無料になります。この制度を導入することにより7%の人が早朝通勤にシフトしたとのことです。実施期間は毎年1年ずつ延長されています。
シンガポールでは、日本と同様、キャラクター文化が浸透しており、陸上交通庁もMRT乗車マナー啓発のため、マスコットキャラクターを導入しています。
「Stand-up Stacy」「Give-way Glenda」「Move-in Martin」「Bag-Down Benny」「Hush-Hush Hannah」の5種類のキャラクターで、MRTの車内や駅構内にステッカーが貼ってあるのをよく見かけます。また、ファミリー向けのイベントも開催しており、キャラクターの仮装コンテスト等を行い、子供たちにもマナーアップを呼び掛けています。こうした取組の結果、国民の61%がMRT利用者の間に思いやり精神が根付いていると考えているそうです。
日本の都市部においても、通勤ラッシュや公共マナーの啓発は常に課題となっています。共通の課題を抱えるシンガポールのユニークな取り組みから学べることも多そうです。
(シンガポール事務所所長補佐 杉田)