シンガポールを散策していると長い幹に羽のような葉が放射状についているヤシの木を目にします。一見するとどれも同じように見えますが、実は様々な種類があるようです。身近なものとしては、ココナッツミルクやナタ・デ・ココ で知られるココヤシ、ドライフルーツなどで食べるナツメヤシ、そして、パーム油として利用されているアブラヤシがあります。パーム油は、カレールーやレトルト食品のほか、チョコレートなど多くの食品に含まれていますが、日本では植物性油脂として表示されることもあり、知らないうちに摂取している食品のひとつです。また、現在世界で最も多く消費されている植物油脂で、食用のほか化粧品など多用途に使用できるうえ、収量率が高く効率的であることから急速に需要が拡大しています。特にインドネシアとマレーシアでは農園の拡大が著しく、これら2か国でパーム油の総生産量の約85%を占めています。
インドネシアではパーム油のプランテーションを開発するために行われる野焼きが原因で大規模な森林火災が発生しています。この森林火災により発生した煙が風に乗ってシンガポールにも広まり、辺りに濃い霧がかかったように視界が悪くなり、時には焦げたような臭いがします。この煙は、人体にも悪影響を及ばす危険性があり、シンガポール政府は国家環境局のホームページやアプリで地域ごとの大気汚染指数やPM2.5の濃度について情報を提供しているほか、 数値に応じた対応の目安を示しています。
インドネシア政府は森林火災の防止に取り組んでいますが、火災の被害を減少させるには予防だけではなく火災発生後の消火活動も重要です。日本の北九州市内の企業では独立行政法人国際協力機構(JICA)と連携して、インドネ シアで泡消火剤を研究・開発し、既に商品として販売をしています。また、鳥取県米子市の中小企業もJICAと協力してゲル状消火剤を活用した消火シス テムの開発、導入に向けて取り組んでいます。日本の地方の中小企業が、イン ドネシアの環境問題のような世界的な問題の解決に向けて積極的にビジネス展開をすることが期待されます。
シンガポール事務所 所長補佐 佐々木