シンガポールを歩いていると、街中やショッピングモールの公共スペースで、軽快な音楽にあわせて踊っている集団を目にすることがあるかもしれません。果たして、みんな何をしているのでしょうか?その答えはおそらく、「ズンバ」でしょう。
聞きなれない方もいらっしゃるかもしれませんが、ズンバとはダンスフィットネスの一種で、軽快な音楽に合わせてパーティー感覚で楽しめる、シンガポー ルだけでなく世界中で人気のエクササイズプログラムです。
プログラムの最中、インストラクターが音楽に合わせて、フィットネスの動きを取り入れたダンスを踊りますが、細かい動きの説明はしないため、参加者はインストラクターを見ながら、見様見真似で踊ることになります。ただし、完璧に真似をする必要はなく、参加者それぞれが出来る範囲で、音楽にのせて好きなように身体を動かすことこそが、ズンバで一番大切なことです。振り付けも簡単で、きつくなったら運動強度を下げることも自分の判断で行うことができるので、高齢者でも参加することが可能です。このように誰でも参加できるのが、ズンバ最大の魅力となっています。
65歳以上の高齢者が2017年には約50万人、2030年には90万人(全人口の24%) にも達すると見込まれ、「超高齢化社会」が現実のものとなりそうなシンガポ ールでは、より長く健康的な生活を送るために、また拡大する保健支出の抑制のためにも、慢性疾患などの予防や健康管理への対策が強化されています。その他のデータでも高コレストロール人口の割合が57.5%(※1)、糖尿病人口 の割合も13.7%(※2)と生活習慣病に結び付く指標が高いこともあり、2017 年に行われたリー・シェンロン首相のナショナルデーラリー(国政方針演説)でも「糖尿病対策」が取り上げられ、日常の食事や運動の大切さを強調するなど、シンガポール国民の健康増進プログラムへの関心は非常に高まっています。
誰でも参加しやすく、健康にも良いというズンバの特徴から、シンガポールの政府機関である健康促進庁(Health Promotion Board)も、人の集まりやすい ショッピングモールのイベントスペースや広場等でズンバを行う「Health Promoting Malls」というプログラムを実施しています。実際に私もこのプログラムに参加してみましたが、100名ほどの参加者とともに音楽に身を任せるのがとても爽快で、あっという間に時間が経ってしまうほどでした。また、プログラムが終わった後も、参加者同士でゆっくりと語り合う姿がそこかしこで見られるなど、地域住民が集まるきっかけの一つにもなっているようです。今年9月にナシ ョナルスタジアムで開催された日本人会夏まつりでも、このズンバプログラム が行われ、多くの日本人・シンガポーリアンがともに汗を流しながら、会場に活気をもたらすとともに、一体感を創りあげていました。 健康づくりだけでなく、コミュニティづくりの手法としても、注目の集まるズンバ。
皆さんも是非トライしてみてはいかがでしょうか。
(※1)2008年のデータ、世界保健機関調査より
(※2)2017年のデータ、国際糖尿病連合調査より
シンガポール事務所 所長補佐 永原